iDeCo(個人型確定拠出年金)は老後資金の強い味方ですが、60歳以降の受け取り方によって課税ルールが変わることをご存じですか?
実は、iDeCoで積み立てた資産は、大きく分けて次の3通りの受け取り方法が選べます。
- 一時金(まとめて受け取る)
- 年金(年単位で分割して受け取る)
- 一時金と年金を組み合わせる
これらは、人によって利用できる税制優遇が異なります。
つまり、安易に受け取り方を決めてしまうと場合によっては課税額が増えてしまうため、iDeCoの退職金や公的年金などの控除額を考慮したうえで、自身に合った受け取り方を選ぶことが大切です。
今回の記事では、私「ねくこ」が、iDeCoを受け取る場合の税金をはじめ、受け取り方のコツについて解説します。
iDeCoは受け取り方で税金が変わる!3通りの受け取り方法
iDeCoは受け取り方によって、かかる税金の種類や額が異なります。
まずは、受け取り方法別に課税される税金や仕組みについて解説します。
一時金で受け取る場合の税金は「退職所得扱い」
一時金での受け取りとは、積み立ててきた資産を一括で全額受け取る方法を指します。
このとき、税制上では「退職所得」として扱われ、「退職所得控除」を利用できるのが大きな特徴です。
退職所得控除とは?
退職所得の金額を計算するとき、勤続年数(ここでは iDeCo に加入していた年数)に応じて 退職所得控除額 を差し引けます。
たとえば、
20年以下の場合・・・「40万円 × 勤続年数」
20年を超えると・・・「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」
が、基本的な計算式となります。
さらに、残った金額の1/2が退職所得として課税対象になるので、結果として大きな節税が期待できるわけです。
計算例:30年加入・3,000万円の資産を一時金で受け取る場合
- 勤続年数(iDeCo加入年数)を確認
仮に30年とします。(拠出月数を年換算したもの) - 退職所得控除額を求める
20年を超えるので、 800万円+70万円×(30年–20年) = 800万円 + 700万円 = 1,500万円 - 退職所得の金額を算出 (受取総額−退職所得控除額)×1/2今回は3,000万円から1,500万円を差し引いた1,500万円の半分=750万円が課税対象となります。
つまり、3,000万円を一時金で受け取った場合、実質750万円分に所得税がかかるイメージです。
もし、退職所得控除がない状態で課税されていたら、もっと高い課税対象になってしまうところを、退職所得控除によって大幅に節税できています。
一時金受取のメリット・注意点
メリット
- まとまった資金を一度に受け取りやすい
老後に大きな買い物をしたい、住宅ローンを完済したいなど、明確な目的がある場合に便利です。 - 退職所得控除で大幅に節税できる可能性
上記の計算例のように、勤続(加入)年数が長いほど控除額が増え、課税対象額を抑えられます。
注意点
- 退職金とのタイミング重複
会社の退職金を受け取る時期と iDeCo 一時金の受け取りが重なると、退職所得控除が意外に使い切れないケースもあります(いわゆる「5年ルール」)。退職時期をずらす/退職金の受け取り時期をずらしてもらうなどの調整を検討しましょう。 - 他の受け取り方法との比較も大切
年金方式で受け取る場合は「公的年金等控除」を活用できるなど、別の控除が使える可能性があります。自分にどの方法が合っているか、全体のシミュレーションをおすすめします。
年金として受け取る場合は、公的年金と同じ「雑所得」扱い
また、iDeCoを年金として受け取る場合は、公的年金と同じく「雑所得」扱いになります。
年金方式での受け取り:毎月(もしくは年数回)に分割受取
年金(分割)で受け取る場合、運用資産を毎月あるいは年数回など、一定のペースで受け取る方法になります。
金融機関や商品によって受取期間・受取回数の設定は異なりますが、自分の希望に合ったプランを選ぶことができるケースが多いのが魅力です。
年金受取がおすすめの人
- 老後の生活費として定期的に受け取りたい
- 一度に大金を手にしてしまうと使いすぎが心配
- 退職後も生活費の安定を重視したい
「公的年金と同じ雑所得」扱いで、公的年金控除が適用
「雑所得」として扱われるということは、公的年金と同様に「公的年金等控除」が適用されます。
こちらも一括で受ける場合とは別の計算方式で、一定額の控除が受けられるのです。
公的年金等に係る雑所得の金額
- 収入金額:iDeCo年金 + 公的年金の受取額など
- 控除額:年齢や公的年金等の収入合計に応じて計算
要するに、iDeCoを年金方式で受け取ると、「公的年金 + iDeCoの年金受取額」全体に公的年金等控除が使えるため、一時金受取とはまた違った節税効果が期待できます。
公的年金等控除額は、年齢や収入金額で異なる
そして、気になる公的年金等控除の金額は、受給者の年齢や公的年金等の収入金額の合計によって変わります。
- 合計所得が1,000万円以下の場合
- 合計所得が1,000万円超~2,000万円以下の場合
- 合計所得が2,000万円以上の場合
など、収入区分ごとに控除額が段階的に設定されています。
詳細は国税庁のWebサイト(No.1600 公的年金等の課税関係)で確認できます。
計算例:年金受取300万円の場合
公的年金等に係る雑所得以外の所得が1,000万円以下で、かつ年金を受け取る人が62歳(報酬比例部分の受給開始年齢)と仮定します。
そして、公的年金 + iDeCo分割受取額の合計が300万円の場合、以下のように雑所得が算出されます。
つまり、197万5,000円が「雑所得」として課税対象になるイメージです。
「すべてが丸ごと課税されるわけではない」点が、公的年金控除を使える年金方式の大きなメリットと言えます。
年金方式のメリット・注意点
メリット
- 毎月の生活費の足しになる
公的年金とあわせて、定期的な収入源を確保できるため、安定感があります。 - 公的年金等控除が適用
合計収入額や年齢に応じた控除枠が設定されており、一時金受取時の「退職所得控除」とはまた別の控除を利用できる点が魅力です。
注意点
- 思わぬ重複に注意
公的年金や他の企業年金と受取時期が重なると、合計額が高くなる分、控除を使っても課税対象額が増える可能性もあります。 - 「一時金受取」のほうが得になるケースがある
退職金とのタイミングや自身のライフプランによっては、一時金+年金など組み合わせがベターな場合も。 - 受給期間中に亡くなったら?
途中で亡くなった際の死亡一時金や残額の扱いなど、商品によって異なるので、金融機関のパンフレットや担当者への確認が大切です。
一時金+年金で受け取る場合の税金
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、一時金と年金の両方を組み合わせて受け取ることも可能です。
一時金で受け取る部分には「退職所得控除」、年金で受け取る部分には「公的年金等控除」が適用できるため、上手にプランを組めば大きな節税効果が期待できます。
併用の場合、どのように受け取るのか?
一時金と年金の割合を決める
- 「一時金でまずいくら受け取りたいか」「年金(分割)でどれだけ定期収入を得たいか」を自分で決めます。
- たとえば、老後の大きなイベント(住宅ローン完済など)にあてる金額を一時金で受け取り、残りの資金を年金方式でコツコツ受給するケースが一般的です。
受け取り時期や回数も自由に設定(商品により異なる)
- 商品や金融機関によって制限はあるものの、多くの場合、受給開始時期・受給期間・回数はある程度選べます。
- ライフプランに合わせて、「退職金のタイミングをずらす」「公的年金の開始年齢と合わせる」など、柔軟に設計可能です。
一時金+年金方式の税金の仕組み
一時金部分 → 「退職所得」として計算
- 一時金で受け取る額については、退職所得控除が適用されます。
- 退職所得控除は、勤続年数(iDeCoの場合は加入年数)に応じて控除額が増え、さらにそこから残った金額の1/2が課税対象となるため、かなり大きな節税が見込めます。
年金部分 → 「公的年金等控除」が利用可能
- 一方、年金(分割)で受け取る額は、公的年金と同じ雑所得扱いとなり、公的年金等控除を使えます。
- 受給者の年齢や公的年金を含む収入金額などに応じて一定額が控除される仕組みで、年金部分の課税負担を抑えられます。
特に、お勤めの企業から退職金を貰える場合は、検討した方が良い仕組みです。
「退職所得控除」と「公的年金等控除」の両方を活用できるのは、一時金+年金という併用パターンならではのメリットであるため、あなたの状況に合わせて、最大限控除を活用できますよ。
なぜ併用受け取りがお得なのか?
- まとまった資金確保&安定収入の両立
- 一時金を使えば、退職後に大きな出費があっても対応しやすい。
- 残りを年金形式にすることで、毎月(あるいは年数回)の安定収入が得られる。
- 課税負担の分散
- 一度に全額を受け取ると、「退職所得控除」は使えるものの、一時金が大きくなりすぎれば課税対象額も増えがち。
- 一部を年金受取に回すことで、年金部分の課税を公的年金等控除で抑えられ、結果的にトータルの税負担を軽減できる可能性があります。
- ライフプランに合わせた柔軟性
- 定年と同時に退職金が支給される場合は、iDeCoの一時金を受取時期を少し遅らせるなどして退職所得控除を無駄なく使うように調整できる。
- 公的年金の額が想定よりも少ないと感じるなら、年金方式の割合を増やして、日常生活費に上乗せできる。
具体的な例:一時金と年金の割合
- 例1:2,000万円を一時金で受け取り、1,000万円を年金形式
- 一時金部分に退職所得控除を適用 → 課税対象額を大幅カット
- 年金部分は年金控除を使って、毎月の生活費を安定確保
- 例2:1,000万円を一時金、2,000万円を年金
- 一時金を少なめにして、年金を厚めに受け取る
- 公的年金控除の枠を活用しやすくなる
注意:上記は、あくまでイメージ例です。
実際の控除額や受給時期は、個人の加入期間・公的年金額・退職金・その他所得などの状況によって変わります。
併用受け取りを検討するときの注意点
公的年金(国民年金・厚生年金・企業年金など)の受給額や開始時期と照らし合わせ、どの程度の年金受取が必要なのか考えることが大切です。
退職金とのタイミングの重なり
会社の退職金とiDeCoの一時金が同じ年に受け取られると、退職所得控除が思ったほど使い切れない可能性も。タイミングのズレが有利になるケースがあります。
金融機関や商品ごとの受け取りルール
一時金と年金をどの割合で、どのタイミングで受け取れるかは、商品や金融機関の規約による部分が大きいので、事前に要確認。
公的年金との合計額を把握
公的年金(国民年金・厚生年金・企業年金など)の受給額や開始時期と照らし合わせ、どの程度の年金受取が必要なのか考えることが大切。
あなたにピッタリの受け取り方法を見つけよう
iDeCoには、「一時金」「年金」「一時金+年金」の3つの受け取り方があることを見てきましたが、どの方法を選ぶのがベストかは人それぞれの状況によって変わります。
以下の例を参考にしながら、自分のライフプランや退職金の見込み、公的年金の額などを考慮して、最適な受け取り方を検討してみましょう。
1. 退職金が少ない会社員・退職金のない自営業者・専業主婦など
- 理由
- 会社の退職金や他の年金収入が少ない、あるいはゼロの場合は、「退職所得控除」をほぼフルに活用できる可能性が高いです。
- 控除できる金額が大きいため、一時金を受け取っても大きな課税負担をかけずに済むケースが多いでしょう。
- 一度にまとまった資金を手にできるので、老後の大きな出費(家のリフォームや趣味・旅行など)をしたい方にもメリット大。
- こんな人におすすめ
- 自営業やフリーランスで退職金制度がない
- パートタイム・専業主婦(夫)などで老後の公的年金額が低い見込み
- 転職が多く、大きな退職金をもらうことが難しい会社員
2. 退職金が多い or 公的年金やiDeCoの給付額が少ない方
- 理由
- 会社の退職金が高額になる場合、一時金(iDeCo)と退職金を同じ時期に受け取ると、退職所得控除を使い切ってしまうかもしれません。
- iDeCoを年金形式で受け取れば、「公的年金等控除」が適用され、年金としての受給額が課税負担を抑えられるメリットが生じます。
- 退職金が多い人ほど、受け取り時期の調整や組み合わせが大事。年金方式にすることで、課税時期を分散できるのも魅力です。
- こんな人におすすめ
- 企業で勤続年数が長く、退職金が大幅に上乗せされる見込みがある
- 公的年金+iDeCoで毎月の収入を安定させたい
- 退職後も長期的に生活費を補う仕組みが必要
3. 退職金も年金も多く、iDeCo残高も多い方
- 理由
- 一時金部分には退職所得控除、年金部分には公的年金等控除という2つの控除が適用可能。
- 退職時に必要なまとまった資金を一時金で確保しつつ、残りを年金形式でコツコツ受け取れば、税負担を分散できるうえに、老後の安定収入も手に入ります。
- 大きな出費に備えつつ、毎月の生活費も潤うという、2つのメリットを享受できるのが魅力。
- こんな人におすすめ
- 企業年金や公的年金を含めた老後資金が潤沢で、さらなる効率的な節税を狙いたい
- iDeCo口座の残高が大きく、受け取り方を工夫すれば税金を大きく抑えられそう
- 退職後の生活費&趣味資金をバランスよくまかないたい
受け取り方ごとの注意点まとめ:あなたに合った方法を見つけよう
ここまで、iDeCoの3つの受け取り方を解説してきました。
併せて、節税効果を最大限に引き出すためにも、あなたが以下の注意点もチェックしてみてください。
上記の仕組みと、下記の注意点を合わせて、ご自身に合った受け取り方を選んでみてください。
1. 一時金で受け取る場合:退職金の金額を確認
- 一時金は「退職所得」扱い
一時金で受け取ると、勤続年数(iDeCoの場合は加入年数)に応じた「退職所得控除」が使えるため、課税対象額を大きく抑えられます。 - 退職金が多い方は要注意
もし会社の退職金と同時期に受け取る金額が高額になると、退職所得控除を使い切れず、課税所得が増えてしまう恐れがあります。- この場合、年金方式にするか、一時金と年金を併用するなど工夫次第で課税負担を軽減できる可能性あり。
- 受給額が退職所得控除内に収まるかどうか、あらかじめシミュレーションしておくことが重要です。
2. 年金で受け取る場合:公的年金などの所得に注意
- 雑所得扱いで「公的年金等控除」が使える
年金(分割)で受け取ると、「公的年金と同じ雑所得」として計算され、一定の控除が適用されます。 - 収入額によっては非課税になる場合も
- たとえば65歳未満で、年金受給額(iDeCo分も含む)が年60万円未満なら、雑所得0円→所得税はかからない。
- 65歳以上なら年110万円以下が目安。
- 公的年金額と合算になる点に注意
公的年金等と合わせて60万円・110万円の枠を超えると所得税が発生するため、自分が将来もらえる年金額の見込みをしっかりチェックしましょう。
3. 退職所得控除の「5年ルール」と「19年ルール」を理解する
iDeCoの一時金と会社の退職金をうまく組み合わせれば、退職所得控除を2回適用できる可能性があります。
ただし、以下のルールに留意しましょう。
「5年ルール」と「19年ルール」
- 5年ルール
- 会社の退職金とiDeCoの一時金を5年以上あけて受け取ることで、退職所得控除を2回分けて使える仕組み。
- 例:60歳でiDeCoの一時金、65歳で退職金を受け取れば、両方とも控除を適用できる可能性が高い。
- 19年ルール
- 会社の退職金を受け取ってから19年空けないと、iDeCoの一時金を受け取る際に退職所得控除が一度しか適用されない状況に陥ることがある。
- iDeCoの受取は最長75歳まで延ばせるので、たとえば55歳で退職金、75歳でiDeCoといった受取タイミングを調整すれば、このルールをクリアしやすい。
退職所得控除をどのタイミングでどう使うかが、受け取り総額に大きく影響します。
会社の退職金が多い場合や退職時期が早い方ほど、この2つのルールを把握して受取時期を賢くデザインしましょう。
終わりに|将来が分からない方は、ライフプランナーに相談するのも手
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今回は以上です。
iDeCoの3種類の受け取り方や、それぞれの注意点を解説しましたが、将来像はイメージできたでしょうか?
とはいえ、ライフプランニングは簡単ではありません。
恐らく、この記事をお読みいただいている多くの方の中には、
という方もいらっしゃると思います。
そこで、最後にライフプランニングを無料で相談に乗ってくれる、「ソニー生命の無料相談」を紹介させてください。
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