この記事の要点
- iDeCoと企業型DCの違いや併用ルール(掛金上限や規約の確認ポイント)がわかる
- 企業型DCが充実している企業なら、無理してiDeCoに加入しなくても十分な場合がある
- 一方で、企業DCやDBがない企業や、足りない人はiDeCoを積極的に検討して老後資金に備えるべき
近年、少子高齢化や年金制度の先行き不安を背景に、老後資金の自助努力がいっそう重要視されています。
従来、公的年金だけに頼っていては十分な生活水準を確保できない可能性が高まっており、その対策として注目を集めているのが「確定拠出年金(DC)」です。
DCには、会社が用意した年金制度を従業員が運用する「企業型DC」と、個人が任意で加入し掛金を拠出する「iDeCo(個人型確定拠出年金)」の2つがあります。
いずれも節税効果や複利による長期運用が期待できる点が大きな魅力ですが、
といった疑問や悩みを抱えがちな制度でもあります。
そこで本記事では、会社員の「企業型DCとiDeCoの併用」について、FP資格保持者であり、数々のお金の相談実績を持つ私「ねくこ」が解説します。
具体的な掛金上限やメリット・デメリットを詳しく解説し、今&老後資産形成に役立つ情報をわかりやすくお伝えします!
「iDeCo」と「企業型DC」の特徴&違い
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは
iDeCoは、個人が自由意志で加入できる「自分年金」の仕組みです。
ここではポイントとなる項目ごとに説明していきます。
個人が任意で加入する“自分年金”
iDeCoの場合、
- 自分でやる年金
- 企業に左右されない年金
といった点が特徴として挙げられます。
どういうことかというと、
- “自分で掛金を出す”➡“自分で運用商品を選ぶ”➡“老後に給付を受け取る”という流れ
➡iDeCoでは会社に依存せず、あくまで自分自身の判断で掛金の金額や運用方法を決められます。
そのため、「公的年金以外にも自力で積み立てたい」と考える人にとって、最初の一歩を踏み出しやすい制度といえるでしょう。
- 会社に左右されない強み
➡企業型DCが整備されていない職場であっても、iDeCoなら個人の意思さえあれば始められます。
転職や退職をしても原則的に継続できるため、転職や独立などを見据える方にとっても、一生涯にわたってマイペースで運用できるのが大きな魅力です。
といった点に魅力を感じる人のための制度です。
掛金全額が所得控除&運用益非課税となる“節税メリット”
また、iDeCoの場合は以下の点も特徴です。
- 具体例:月2万円拠出なら、年間24万円が所得控除
仮に月2万円、年間24万円をiDeCoに拠出した場合、その24万円分は課税所得から差し引かれます。
早い話が、「所得税や住民税が安くなる」ため、資産運用の運用益に加えて節税という意味でも、生涯の手取りが増える可能性があります。
- 通常運用益には約20%超の課税があるところ、iDeCoなら非課税再投資
一般的に株式や投資信託の利益には約20.315%(所得税+住民税)の税金がかかります。
しかしiDeCoで得られた運用益は上記の税金が非課税となり、受け取り方や個人の状況によって差はありますが、一般的に株式や投資信託と比べると税金が安くなる可能性があります。
- 給与からの天引きや口座振替など、拠出手段もさまざま
会社員の場合は給与天引き、自営業の方は銀行口座引き落としなど、自分の生活スタイルに合わせて選べるのが便利です。
いずれも拠出した金額はフルに所得控除の対象になるので、節税効果を最大限活用できます。
iDeCoの場合、運用益が非課税になるてんはNISAと同様ですが、所得控除となり節税効果がある点が大きな違いといえます。
その他、掛金上限や年齢要件などは、こちらの記事にて解説しています!
企業型DC(企業型確定拠出年金)とは
企業型DCは、あなたが勤めている企業(法人)が従業員に代わって掛金を拠出し、年金原資を積み立てる仕組みのことです。
資産運用という点では同類ですが、企業型DCは給与天引きで拠出されるのに対し、iDeCoは原則口座振替で拠出されます。
ここでは、
- 企業が掛金を拠出する年金制度
- 企業側も掛金を経費計上できる
という二つの視点から、あなたの勤務先に企業型DCがある理由を解説します。
企業が掛金を拠出する年金制度
- 企業の福利厚生策として
会社が給与やボーナスとは別に、老後資金として掛金を出してくれる。 - 従業員へのメリット
「マッチング拠出」がある場合は、会社拠出分に加えて自分で追加拠出も可能。将来の老後資産を一層充実させられる。 - 制度設計は企業ごとに異なる
拠出額の上限や運用商品のラインナップは、企業と金融機関の契約次第。社内規約や人事部の説明をチェックすることが大切。
あなたの会社に企業型DCが導入されている場合、それは「従業員の老後をサポートしよう」という企業の方針が反映された福利厚生の一つです。
たとえば、月々1万円や2万円を会社が負担してくれるおかげで、自分だけでは難しい金額を積み立てられる可能性があります。
さらに、企業によっては「マッチング拠出」という仕組みを採用している場合もあります。
ただし、企業型DCの具体的な拠出額や運用方針(運用商品や手数料など)は、会社と金融機関が取り決めた規約によって大きく左右されます。
そのため、まずは社内規約や総務部・人事部からの資料をよく確認してみましょう。
マッチング拠出とは
企業で積み立ててくれている企業型DCに、あなた自身が一定の額を上乗せして拠出できる制度のこと。こうすることで、より多くの資産を形成できます。
法人として経費計上ができる
- 法人税上のメリット
会社が拠出する掛金は“経費”として計上でき、法人税の課税所得を減らせる。 - 社会保険料のコントロール
給与や賞与を直接増やすより、社会保険料が上がりにくい場合があり、会社側にとっても有利。 - 従業員とのwin-win効果
従業員は老後の安心感を得られ、企業は人材確保やモチベーション向上につなげられる。
企業型DCを導入するもう一つの大きな理由は、会社として拠出した分の保険料を経費として処理できることにあります。
もし企業が同じ金額を「給与」として支払うと、その分「社会保険料」や「従業員の所得税」などが増えるケースが多くなります。
しかし、「企業型DCの掛金」という形であれば、法人税の課税所得を減らしながら、従業員の老後資金をサポートできるのです。
また、会社がこうした制度を整備していると「社員を大切にする企業だ」というイメージアップにつながり、優秀な人材の確保や離職率の低下が期待できる面もあります。
結果的に、企業と従業員が互いにメリットを享受できる“win-win”な仕組みとして、企業型DCは多くの職場で導入が進んでいるのです。
このように、企業があなたの老後資金づくりを応援する背景には、単なる福利厚生を超えた企業の経営上のメリットや、従業員満足度の向上といった要素が組み合わさっています。
自分の会社に企業型DCがあるなら、その恩恵をしっかり理解し、規約や手続きの流れを踏まえて上手に活用すると、将来の備えがぐっと充実していくでしょう。
POINT:企業型DCは「“法人負担”で社員や役員の老後資金をサポートできる制度」。
企業型DCとiDeCoは併用可能!その場合の制限や注意点
そして、制度として上述で紹介したiDeCoと企業型DCは併用可能です。
ただし、お勤めの企業の企業型DCが、規約でiDeCo併用を認めていることが条件です。
また、両制度を同時に活用する場合は“併用ルール”や“掛金の合計上限”が定められている点にも留意しなければなりません。
ここでは、主に「DB(確定給付企業年金)の有無」に応じた2つのパターンに分けて解説します!
まずは人事・総務部に相談しよう
まずは、何といっても会社に聞くことです。
多くの企業は、人事・総務部が企業型DCを担当していると思われます。
具体的には、
- 「うちの企業型DCはiDeCo併用OKですか?」
➡「iDeCoを併用しても問題ないか」「その場合、掛金の上限はいくらか」などを明確にしておくことが大切です。企業型DCの運用ルールやマッチング拠出の有無・条件なども合わせて確認すると、より具体的な選択肢が見えてきます。
- 「マッチング拠出とiDeCo、どちらがお得ですか?」
➡企業型DCにマッチング拠出制度がある場合、従業員が追加で拠出する分が税制優遇を受けられるという点でiDeCoに近いメリットがあります。ただし、掛金の扱い方や限度額、企業独自の上乗せなどは会社によってまちまちです。どちらを選ぶ方が得策なのか、人事部に相談して企業の制度を把握してから判断するとよいでしょう。
といった話をすると、どうすれば良いか行動指針が見えてくると思います。
掛金バランスの決定(企業型DCのみ(DBなし)の場合)
そして、企業が「併用OK」となった場合、次に「ご自身のiDeCoにいくら掛けるか」を検討します。
- 企業型DCの拠出=月3万円、iDeCo=月2万円、合計5.5万円を最大目指すか?
➡企業型DCとiDeCoを両立させる場合、上限をフル活用して月5.5万円まで拠出するパターンがひとつの理想とされます。ただし、実際にそこまで拠出できるかは、企業の規約や自身の収支状況によって異なるので要注意。
- あるいは“少なめ”にして、無理のない範囲でスタートするか?
➡自分の可処分所得や生活費、将来のライフイベント(住宅ローン・教育費など)を考慮して、拠出額を設定しましょう。iDeCoには年に1〜2回程度、掛金額を変更できる金融機関もありますので、まずは少額から始めてみるのも方法です。
基本的に、iDeCoはやった方が良い確率が極めて高い資産運用です。
しかし、将来の年金受取り額が増えやすくなるものの、毎月の家計に与える負担が増えるのも事実です。
「会社拠出だけでは足りないから、個人で上乗せしたい」という方はiDeCoを検討するとよいですが、逆に「企業型DCで十分な金額を積み立てている」「現時点で可処分所得に余裕がない」という場合は、あえてiDeCoに加入しなくても構いません。
もし、お勤めの企業の掛金が手厚く、さらにマッチング拠出があれば、老後資金を確保するうえで十分な運用を行っているケースも多いでしょう。
そのような場合は、“無理してiDeCoに加入しない”という選択肢も、健全な家計管理のうえでは非常に有効です。
最終的には自分のライフプランと資金状況を総合的に判断して、「上限まで拠出するのか」「最低限だけ拠出するのか」を決めるのがおすすめです。
- まずは人事・総務部に相談
- 会社側が「iDeCoと併用してもOK」という規約を設けていることが必須です。企業型DCの導入時に規約を作成しているはずなので、人事や総務に確認しましょう。
- 企業型DC+iDeCoの上限は55,000円/月
企業型DCとiDeCoをあわせた拠出総額が、月あたり55,000円を超えない範囲で拠出することが認められています。 - 会社拠出分+個人拠出分=55,000円以内なら自由に設定可能
たとえば企業型DCで月32,000円を会社が拠出している場合、残り23,000円までiDeCoで拠出できます。また、会社拠出が月40,000円なら、iDeCoは月15,000円までが目安となり、合計で55,000円に収まります。
企業型DCと「DB」を併用している場合は・・・
そして、お勤めの企業が「企業型DC」と「DB(確定給付企業年金)」を併用しているケースがあります。
DB(確定給付企業年金)とは・・・
企業が従業員の老後の生活を支援するために設ける年金制度の一つ。特徴的なのは、将来受け取る年金額があらかじめ確定している点です。これは、加入者が退職後に受け取る年金が「給付額」として事前に定められており、その金額が勤務期間や給与などに基づいて計算される仕組みです。
DBとDCを併用している手厚い企業の場合、
- 合計の上限:27,500円/月
➡DB(確定給付)とDC(確定拠出)の両方を導入している企業では、企業型DCとiDeCoの合算拠出額が月27,500円までに制限されます。
- やはり“規約でiDeCoを認めているか”がカギ
➡DBを併設している企業型DCの場合でも、会社側が「iDeCoとの併用OK」の規約を定めていないと、個人がiDeCoに加入できないケースがあります。
といった点に注意してください。
DBを含む企業年金制度がある会社では、企業型DCとiDeCoを併用しても、拠出合計の上限が月27,500円と低めに設定されるのが特徴です。
これは、企業側がDB(確定給付)に対しても一定の掛金を拠出しているため、トータルでの企業年金負担が大きくなりすぎないように制限をかけているからです。
まとめ
企業型DCとiDeCoを両立させることで、企業拠出と個人拠出を組み合わせ、さらなる節税や年金額アップが狙えます。
しかし、併用には企業の規約や法令で定められた拠出限度額の制約があるため、事前の確認が欠かせません。
- 企業型DCのみ(DBなし) → 月55,000円まで
- 企業型DC+DB(確定給付) → 月27,500円まで
という上限があることを覚えておきましょう。
いずれの場合も、「iDeCoの併用可否を規約で認めているか」が肝心となります。
せっかく企業が年金制度を用意していても、個人の自由に任せていないケースではiDeCo側の拠出が難しい場合もあるでしょう。
まずは自分の会社の状況を正確に把握し、無理のない範囲で掛金を設定して老後資産形成をスタートしてみてください。
POINT:会社員が併用を検討するときは「自社規約」「拠出上限」「手数料」の3つを必ずチェックしましょう。
最後に|企業DC/DBがない・足りない人は積極的にiDeCoを検討しよう
今回は以上です。
企業型DCやDBが制度としてある企業は、比較的恵まれていると言えます。
そういう企業にお勤めで、かつ拠出額が十分と思う場合は、無理してiDeCoをやる必要はないでしょう。
しかし、「拠出額が足りないと思う人」や「お勤めの会社に一生いるわけではない人」、そして「そもそもそういった制度がない企業にお勤めの人」の3つの状況にある人は、iDeCoをやった方が良いでしょう。
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また、退職金がない・少ない企業の方も、iDeCoはやることを強くおすすめします。
退職金がない場合、そもそも今、世間を騒がせている「〇年ルール」なども適用されないため、比較的安心して掛金を積み立てられることもメリットです。
ぜひ、ご自身の行動で明るい未来のために向かっていきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!