生命保険の相続税対策|非課税枠の活かし方と、やってはいけない6つの勘違い

  • URLをコピーしました!

※当サイトのリンクの中には広告が含まれます。

このサイトの本文はCC BY 4.0で自由に引用・転載できます。

出典リンクとライセンス名を明示してください。

親や配偶者に万が一のことがあったとき、相続税はどうなるの?

自分の今の生命保険は、将来家族の負担を減らせるのかな…

と不安に思う人は少なくありません。

この記事では、そんな悩みを持つ方へ向け、以下について解説します。

この記事でわかること

  • 生命保険を相続対策にどう活かすか
  • どんな家庭に向いているか
  • 何を間違えると想定どおりに機能しないか
  • 生命保険への加入や見直しの前に何を確認すべきか

大前提として、「生命保険に入っているだけで相続税対策になる」わけではありません

相続税対策の第一歩は、ご自身のケースで相続税の申告・納税義務が生じるかどうかを把握することです。相続税は、課税価格の合計額が以下の「基礎控除額」を超える場合に申告・納税が必要になります。[9]
※課税価格の合計額は、取得財産の合計から債務・葬式費用等を控除し、一定の贈与加算等を反映して計算します。詳細は国税庁の案内をご確認ください。[9]

基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

この申告義務の有無を確認したうえで、非課税限度額の活用や納税資金の確保を具体化していくのが、相続対策の基本的な手順です。

生命保険には、非課税枠の活用のみならず、納税資金としての現金確保や、受取人指定を通じた円滑な資産承継といった多面的な役割があります。[1][2][3][5] ただし、契約形態や受取人の設定を誤ると、思ったような対策にはなりません。[1][2]

ねくこ

この記事を最後まで読むと、ご自身の家庭の相続対策に生命保険が向いているかどうかを判断しやすくなりますよ。

なお、「そもそも死亡保険金に相続税はかかるの?」「非課税枠っていくら?」など、制度の基本にわからないことがある方は、以下の関連記事を読むと理解が深まります。

【制度の基本(死亡保険金に相続税がかかる条件など)から知りたい方はこちら】

本記事は一般的な情報であり、個別の税務判断を行うものではありません。保険料負担者、受取人、他の遺産、遺産分割状況により結論が変わるため、申告前は税理士等へご確認ください。

目次

生命保険でできる3つの相続対策

生命保険は、相続税の負担を抑えるだけでなく、納税資金の確保誰にどの資金を渡すかの調整にも役立ちます。

ここでは、生命保険を相続対策として「具体的にどう使うのか」、3つに整理して解説します。[2][5]

対策の方法主なメリットこの対策が向いているケース
非課税限度額の活用非課税限度額を活用できる場合がある法定相続人が複数いる家庭
死亡保険金による資金確保納税や当面の支出に充てやすい現金を確保しやすい不動産など現金以外の資産が多い家庭
受取人の指定渡したい相手を明確にしやすい遺産の分配で揉めやすい家庭

非課税限度額を活用しやすい形で備える

生命保険が相続対策で注目される大きな理由の一つが、死亡保険金の非課税限度額です。

受取人が相続人の場合に限り、相続税の課税対象となる死亡保険金には以下の「非課税限度額」が適用されます。

非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数

※死亡保険金にかかる税金(相続税・所得税・贈与税)は、被保険者、保険料負担者、受取人の関係で異なります。本文の非課税限度額は、相続税の課税対象となる死亡保険金で、受取人が相続人である場合に適用されます。[1][2][6][7]

相続人全員が受け取った(相続税の課税対象となる)死亡保険金の合計額がこの枠内であれば、その死亡保険金には相続税はかかりません。限度額を超えた部分のみが、相続税の課税対象となります。[2]

ねくこ

たとえば、法定相続人が3人(配偶者と子ども2人)の場合、1,500万円までの死亡保険金は非課税です。

預貯金をそのまま相続させるよりも、生命保険として備えておくことで、相続税の計算上有利になる場面があるのはこのためです。[2] ただし、この非課税限度額が使えるのは、相続人が受け取る死亡保険金に限られます。相続人以外を受取人にしている場合は、この非課税の適用はありません。[2]

そのため、「保険に入っているかどうか」だけでなく、誰が受け取る形になっているかまで含めて考える必要があります。[1][2]
※受取人が相続人でも、相続放棄した人や相続権を失った人は、この非課税枠の対象に含まれません。[2]
※法定相続人の数は、相続放棄があっても放棄がなかったものとして数えます。養子は、原則として実子がいるときは1人まで、実子がいないときは2人までです。[2]

納税資金を現金で準備しやすくする

生命保険が相続対策に役立つ理由は、税額に関わることだけではありません。

相続税は、原則として金銭で納付する必要があり、申告と納付は通常、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行います。[5]

ねくこ

そのため、相続財産に不動産や自社株など、すぐに現金化しにくい資産が多い家庭では、税金を払うための現金が足りないという問題が起こりやすくなります。[5]

生命保険の死亡保険金を一時金で受け取れる形にしておけば、そうした場面でも納税資金を確保しやすくなります。[1][5] つまり、生命保険は「相続税を減らす道具」としてだけでなく、「相続税を払えるようにする備え」としても意味があります。

この違いは見落とされがちですが、とても重要です。[5]

受取人を決めて、家族に渡す資金を調整しやすくする

生命保険には、あらかじめ受取人を指定できるという特徴があります。

そのため、「この資金は配偶者に」「この資金は子どもの生活資金として」など、渡したい相手を意識して設計しやすいという利点があります。[1][2] また、死亡保険金は原則として、契約上の受取人が取得するものであり、受け取ったあとに改めて遺産分割協議で分ける財産とは性質が異なります。[3]

一方で、相続税の計算上は、被相続人が全部または一部を負担していた死亡保険金が「みなし相続財産(本来の遺産ではないものの、相続で受け取ったものとみなして課税対象になる財産)」として扱われることがあります。[2]

このため、「誰にどの資金を渡すか」をはっきりさせたい家庭では、生命保険が実務上使いやすい場面があります。[3]

ねくこ

ただし、ここで注意したいのは、受け取った後に家族間で任意に再分配できるわけではないという点です。

契約上の受取人が受け取った死亡保険金を、その後ほかの家族に渡すと、贈与税の問題が生じることがあります。[3]

受取人指定は便利ですが、「あとで調整すればよい」と考えるのではなく、最初から誰に渡すのかをできるだけ明確にしておくことが重要です。[3]

生命保険による対策が有効な家庭・慎重に判断すべきケース

生命保険による相続対策は、どの家庭にも同じように向いているわけではありません。

ここではどのような家庭に向いているのか、どのようなケースでは慎重に判断すべきかを見ていきます。

【ケース別】生命保険が相続対策に有効な理由

相続の課題・資産背景生命保険が役立つ理由
不動産が多く、現金が少ない相続発生直後に必要な現金を確保する手段になる
法定相続人が複数いる死亡保険金の非課税限度額を活用できる[2]
特定の資産(自宅や事業)を残したい資産を売却せず、他の相続人に渡す代償金の原資を準備できる
誰にどの資金を渡すか明確にしたい受取人を指定できるため、渡す相手を明確にできる[1][3]

生命保険による対策が向いている家庭

生命保険の活用が向いているのは、相続税の負担だけでなく、現金の確保や家族への資金の渡し方にも課題を抱えている家庭です。

たとえば、相続財産に不動産や自社株など、すぐに現金化しにくい資産が多い場合、相続税を支払うための現金が不足しやすくなります。[5] このような状況では、死亡保険金を一時金で受け取れるようにしておくことで、納税資金や当面の生活費に充てる現金を確保しやすくなります。[1][5]

また、法定相続人が複数いる家庭も、生命保険による対策を活かしやすいケースです。

相続人が受け取る死亡保険金には「500万円 × 法定相続人の数の非課税限度額があるため、預貯金をそのまま残すより、生命保険として備えておくほうが相続税の計算上有利になる場面があります。[2]

さらに、「自宅は配偶者に残したい」「事業は後継者に引き継ぎたい」といった意向がある場合も、生命保険は役立ちます

特定の資産を一人に集中させる場合、他の相続人との調整のために、代償金として現金が要る場合があります。

ねくこ

生命保険を活用すれば、そうした代償金の原資も計画的に準備しやすくなります。

慎重に判断したいケース

一方で、生命保険を使った相続対策を急いで進めるべきではない、あるいは別のリスクに注意したい状況もあります。

たとえば、すでに十分な現預金があり、納税資金や当面の生活資金に困る可能性が低い家庭です。

このようなケースでは、保険料を負担してまで生命保険を活用しなくてもよい場合もあります。今ある資産の分け方や遺言の整備などを、先に考えたほうがよいケースもあります。

また、保険料が家計にとって重い負担になる場合も慎重な判断が必要。相続対策のために生命保険へ加入した結果、生前の生活を圧迫してしまっては本末転倒です。

とくに注意したいのが、保険の契約関係が複雑なケースです。

死亡保険金を受け取ったときにかかる税金(相続税・所得税・贈与税)は、契約書上の名義だけでなく、被保険者・保険料負担者・受取人の組み合わせで決まります。[1]

そのため、保険料の負担者が途中で変わっていた場合、贈与を受けた資金で払っている場合、複数人で負担している場合などは、表面上の名義だけで判断すると、想定外の課税関係が生じるおそれがあります。[1][6][7]

ねくこ

このようなケースでは、加入や見直しを進める前に、現在の契約関係と資金の流れを整理し、税理士などの専門家に確認しておくのが安全です。

ケース別に見る、生命保険の相続対策の考え方

座って話をする三世代親子・ファミリー

同じ生命保険でも、家庭の状況によって「役立つポイント」が変わります。

ここからは、よくある家族構成や資産状況ごとに、どんな悩みに対して生命保険がどう役立ち、どこに注意すべきかを整理します。

配偶者と子どもがいる一般家庭

一般的な家族構成である「配偶者と子ども」がいる家庭では、一次相続で配偶者がどれだけ財産を受け取るかによって、将来の「二次相続」でお子さんが負担する税額に影響することがあります。そのため、二段階の相続をトータルで見て、家族全体の税負担を抑える設計が重要です。

生命保険は、一次・二次それぞれの相続を見据えた資金準備を柔軟に行える手段として役立ちます。ただし注意すべきは、一次相続で「配偶者の税額軽減(1億6,000万円または法定相続分まで無税になる特例)」を活用して目先の税負担を抑えても、二次相続の負担まで自動的に軽くなるわけではないという点です。[4]

目先の生活のために配偶者へ手厚く残すのか、それとも将来の税負担を考えてあえて最初からお子さんへ資金を遺すのか。資産の全体像を見ながら、受取人設定による「現金の置き場所」を慎重に判断しましょう。

不動産が多く、現金が少ない家庭

不動産の割合が高い家庭では、相続財産の評価額は大きくても、すぐに使える現金が少ないという問題が起こりやすい相続税は原則として金銭で納付し、通常、死亡を知った日の翌日から10か月以内に申告・納付しなければいけません。[5] そのため、財産があっても納税資金の確保が課題になりやすいです。

このような家庭では、死亡保険金を一時金で受け取れるようにしておくことで、納税資金や、相続発生直後に入り用となる当面の現金を確保しやすくなります。[1][5] 不動産を急いで売却したり、相続直後の資金繰りで慌てたりするリスクを抑えやすいのが、生命保険の大きな利点です。

ただし、保険金額は大きければよいというものではありません。実際には、想定される相続税やすでにある現預金などを踏まえて考えたほうがよいでしょう。

ねくこ

死亡保険金で、納税資金を優先するのか、相続発生直後の当面の現金を優先するのかを、あらかじめ整理しておきましょう。

自宅や事業資産を残したい家庭

「自宅は配偶者に残したい」「事業は後継者に引き継ぎたい」といった意向がある家庭では、特定の資産を一人に集中させる場合があります。その結果、他の相続人との調整のために、「代償金」として現金を用意する必要が生じることがあります。

こうした場面では、生命保険が代償金の原資を計画的に準備する手段として役立ちます

たとえば、資産を承継する人とは別の相続人に、死亡保険金を通じて現金を渡す設計にしておけば、資産そのものを売却せずに調整しやすくなります。受取人をあらかじめ指定できるため、誰にどの資金を渡したいのかを生前から整理しやすい点も特徴です。[1][3]

このとき注意したいのは、死亡保険金は原則として契約上の受取人が取得するものであり、遺産分割協議で後から分け合う財産とは性質が異なるという点です。[3]

たとえば、「資産を継ぐ人が保険金も一旦受け取り、あとで他の家族へ代償金として渡せばよい」と考えていると、その資金移動が贈与とみなされるおそれがあります。[3] 代償金の準備に保険を活用するなら、受け取った後の再分配を避けるため、最初から渡したい相手を契約上の受取人に設定しておきましょう。[3]

配偶者の税額軽減があっても、生命保険が意味を持つケース

配偶者が相続する場合は、一定の範囲まで相続税がかからない「配偶者の税額軽減」があります。[4]

ただし、一次相続で税負担が抑えられても、二次相続では配偶者の税額軽減が使えません。また、この制度は配偶者が実際に取得した正味の遺産額を前提に計算するため、申告期限までに分割されていない財産は原則対象外です。[4]

ねくこ

そのため、「配偶者が受け取るなら安心」とは言い切れず、納税資金や二次相続、他の相続人との資金調整まで含めて考えたほうが安心です。[4][5]

相続対策に必要な死亡保険金の目安は?

死亡保険と書かれた四角いプレートと、「1」「5」「10」「50」「100」「500」と書かれた丸いプレート

生命保険を相続対策として具体化していく中で、必ず直面するのが「いくら備えるべきか」という問題です。

ただし、必要な保険金額に一律の正解はありません

「想定される相続税」「当面必要な現金」「すでにある現預金」の差額から考えるのが基本です。[5]

まずは、「何にいくら必要か」「今いくらあるか」を感覚ではなく数字で整理してみましょう。具体的には、以下の項目を洗い出し、不足する現金の額を割り出します。

必要な保険金額を割り出すための4項目

整理する項目確認したいポイント
想定される相続税額10か月以内の「現金納付」にいくら要るか
当面の生活資金口座凍結などを想定し、残された家族の当面の生活費としていくら確保すべきか
相続人間の調整資金代償分割など、他の相続人に渡すための「代償金」がいくら必要か
すでにある現預金上記3つの合計に対し、保険に頼らず「今すぐ使える手元の現金」がいくらあるか

金額の目安に迷う場合は、これらの項目を一つずつ書き出してみてください。

「必要な資金の合計」から「すでにある現預金」を差し引くことで、保険で備えるべき金額の輪郭が見えてきます。

まず、必要になる現金を洗い出す

保険金額を考えるときは、まず何のために現金が要るのかを整理します

同じ1,000万円でも、納税資金として備えるのか、遺族の当面の生活資金として備えるのか、あるいは代償金の原資として備えるのかで意味は異なります。

ねくこ

とくに相続税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に申告し、原則として金銭で納付する必要があるため、優先して見積もっておきたい項目です。[5]

そのため、保険金額を「想定される相続税額」だけで決めるのではなく、相続発生後の比較的早い段階で必要になる現金を、使い道ごとに見積もっておくことが大切です。

次に、すでにある現預金を差し引く

必要な現金の総額が見えたら、次に、すでに手元にある現預金や遺産から充てられる現預金を確認します。

十分な現預金がある家庭なら、無理に生命保険で備える必要はありません

保険金額は、必要な現金の総額から、すでに確保できる現預金を差し引いた不足額を目安に考えるのが基本です。

この不足額を生命保険で備える場合、相続人が受け取る形にすれば、「500万円 × 法定相続人の数」の非課税限度額が適用されます。[2]

ただし、非課税限度額の範囲内であれば十分と安易に判断せず、他の相続財産や配偶者の税額軽減なども含めて、その金額が家庭全体の資産状況に照らして本当に必要かを見極める視点が欠かせません。[4][5]

やってはいけない相続税対策の勘違い

生命保険は相続対策として有効な手段ですが、制度の解釈や活用方法を誤ると、期待したような効果が得られないばかりか、想定外の課税を招くリスクがあります。[1][2]

ここまでの内容と一部重複しますが、復習も兼ねて、特に誤解されやすいポイントをまとめました。ご自身の認識とズレがないかチェックしてみてください。

生命保険の相続対策でよくある「6つの勘違い」

  1. 相続人以外を受取人にしても非課税枠が適用される
  2. 契約上の名義だけでかかる税金の種類が決まる
  3. 保険金を受け取った後で家族に分配すればよい
  4. 配偶者を受取人にすれば無条件に税負担が軽くなる
  5. まだ死亡保険金が出ていない契約は財産評価に関係ない
  6. 名義変更の手続だけで税務上の対策が成立する

勘違い① 相続人以外を受取人にしても非課税枠が適用される

死亡保険金の非課税限度額は、法定相続人が受け取る場合にのみ適用される制度です。

そのため、内縁の配偶者や、相続人に当たらない孫などを受取人に指定した場合は、「500万円 × 法定相続人の数」の非課税限度額は適用されません。[2]

生命保険であれば一律に非課税枠が使えると誤認していると、実際の税負担が想定より重くなるおそれがあります。受取人を設定する際は、資金を渡したい相手が法定相続人に当たるかどうかを確認しておくことが重要です。[2]

ねくこ

なお、相続人以外が受け取る場合でも一律に2割加算になるわけではありませんが、被相続人の一親等の血族および配偶者以外の人は、相続税額の2割加算の対象になることがあります。[10]

勘違い② 契約上の名義だけでかかる税金の種類が決まる

生命保険にかかる税金の種類は、契約書上の名義だけで決まるわけではありません。死亡保険金の課税関係は、「被保険者」「保険料負担者」「受取人」の組み合わせによって、相続税・所得税・贈与税のいずれかに分類されます。[1]

とくに注意が必要なのは、契約者と「実際に保険料を負担していた人」が一致していないケースです。

名義が子どもであっても、実質的な保険料負担者が親であれば、税務上は名義どおりに扱われないことがあります。

ねくこ

表面上の契約書だけでなく、実質的に誰の資金で保険料を支払っていたのかを確認するようにしてください。[1]

勘違い③ 保険金を受け取った後で家族に分配すればよい

死亡保険金は、本来の相続財産ではなく、契約上の受取人が取得するものとして扱われます。[3]
※一方で、保険料を被相続人が全部または一部負担していた場合などは、相続税の計算上「みなし相続財産」として課税対象となることがあります。

そのため、代表者がいったん保険金を受け取り、後から他の家族に現金を分ければよいと考えていると、思わぬ課税リスクが生じます。契約上の受取人が取得した死亡保険金を他の家族へ渡した場合、その資金移動は贈与とみなされ、贈与税の対象となるおそれがあるためです。[3]

ねくこ

最終的に家族間で分配する予定であっても、受取人設定の段階で「誰に渡したい資金か」を正確に反映しておくことが重要です。[3]

勘違い④ 配偶者を受取人にすれば無条件に税負担が軽くなる

配偶者が遺産を相続する場合、1億6,000万円または法定相続分相当額まで相続税がかからない「配偶者の税額軽減」があります。[4]

この特例を理由に「配偶者を受取人にしておけば税負担を抑えられる」と考えがちですが、そう単純ではありません。配偶者の税額軽減は、配偶者が実際に取得した正味の遺産額を前提としており、申告期限までに分割されていない財産には原則として適用されません。[4]

また、一次相続での税負担を抑えられたとしても、将来配偶者が亡くなった際の二次相続ではこの税額軽減が使えず、結果的に子ども世代の税負担が重くなる可能性があります

ねくこ

配偶者を受取人にするかどうかは、未分割のリスクや二次相続、他の相続人との資金調整まで含めて総合的に判断する必要があります。[4][5]

勘違い⑤ まだ死亡保険金が出ていない契約は財産評価に関係ない

生命保険を用いた相続対策では、被保険者が亡くなった後の死亡保険金にばかり目が行きがちですが、まだ被保険者が亡くなっておらず、死亡保険金が支払われていない契約でも、課税関係に影響することがあります。[8]

相続が始まった時点で、まだ死亡保険金の支払い事由が発生していない契約については、その契約をその時点で解約した場合の解約返戻金相当額で評価するのが原則です。なお、掛け捨て保険のように解約返戻金がないものは、評価の対象になりません。[8]

死亡保険金がまだ出ていないから関係ないと考えていると、相続財産の総額を過少に見積もってしまう原因になります。

ねくこ

解約返戻金のある保険契約を保有している場合は、死亡保険金とは別に、契約そのものの評価額を把握しておきましょう。

勘違い⑥ 名義変更の手続だけで税務上の対策が成立する

契約者名義の変更や、親から子への資金移動を伴う保険設計について、「これで税務上有利になる」と単純に考えるのは危険です。[1][6][7]

国税庁の案内によれば、生命保険契約の契約者名義を変更しただけでは贈与税は課税されず、実際に保険料を負担していない人が保険金を受け取る場合には、贈与税が問題になることがあります。つまり、名義や申告書上の体裁だけを整えても、実質的な資金拠出の事実が伴っていなければ、想定どおりの税務判断にはなりません。[6][7]

ねくこ

保険料の負担者が途中で変わっているケースや、贈与資金で保険料を支払っているケースなどは、自己判断を避け、見直しの前に税理士等の専門家へ確認しておくのが安全です。[1][6][7]

加入・見直し前に確認したいチェックリスト

「Check List」と書かれたプリントを挟んだクリップボードの上に、ペンと身分証用の名札入れ?が置かれている

生命保険を相続対策に活用する場合は、商品を比較する前に、まず契約関係・受取人・家庭全体の資産状況の整理が重要です。

ここでは、生命保険への加入・見直し前に確認したいポイントを、チェックリストとしてまとめました。

生命保険の加入・見直し前に整理すべき5つのポイント

確認事項チェックすべきポイント
① 保険料の負担者契約者名義ではなく、実際に誰が資金を負担しているか
② 受取人の設定相続人に当たるか、意図した受取人になっているか
③ 遺産全体の資産構成不動産・自社株・預貯金などの割合と、現預金の水準を把握できているか
④ 配偶者の取得見込み配偶者の税額軽減を見込む前提が現実的か
⑤ 申告期限までの整理相続税の申告・納付までに必要な準備を進められそうか

① 誰が保険料を負担しているか

死亡保険金にどの税金がかかるかは、契約書上の名義だけでは決まりません。被保険者・保険料負担者・受取人の組み合わせで決まります。[1]

そのため、名義だけで判断せず、実際に誰の資金で保険料を払っているかの確認が不可欠です。

② 受取人が相続人に当たるか

相続人が受け取る死亡保険金には非課税限度額がありますが、相続人以外が受け取る死亡保険金にはこの適用はありません。[2]

注意したいのは、「内縁の配偶者」や「息子の妻(長男の嫁など)」を受取人に指定するケースです。

こうした人は、原則として相続人ではないため、非課税枠は使えません「誰に渡したいか」だけでなく、その相手が税務上の相続人に当たるかどうかまで考慮して受取人を決めましょう。[2][3]

③ 遺産全体の資産構成と現預金の水準

生命保険が必要かどうかは、保険だけを見ても判断できません

不動産が多いのか、預貯金が多いのか、すぐ使える現金がどれくらいあるのかを確認し、保険でカバーすべき「不足分」を明確にしてはじめて、過不足のない設計が可能になります。[5]

④ 配偶者の取得見込み

配偶者には税額軽減がありますが、未分割財産には原則として適用されません。[4]

そのため、「配偶者が受け取れば大丈夫」と考えるのではなく、一次・二次の両方の相続を含めた取得見込みを立てておくのがセオリーです。[4]

⑤ 申告期限までに何を整理するか

相続税の申告と納付は、通常、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。[5]

納税資金、受取人、未分割リスクまで含めて、期限内に何を整理しなければいけないのか、見直しの段階から意識しておくと、目安となる保険金額や受取人設定を考えやすくなります。[4][5]


生命保険による相続対策は、加入して終わりではありません。契約関係・受取人・資産全体・期限を総合的に見極めてこそ、残された家族を守る対策として真価を発揮します

ねくこ

見直しを検討するときは、このチェックリストを起点に、現状の整理から始めてみてください。

よくある質問(FAQ)

受取人を変更するだけでも相続税対策になりますか?

受取人の変更だけで有効になることはありますが、それだけで十分とは限りません。

死亡保険金にどんな税金がかかるかは、契約者名義だけでは決まりません。被保険者・保険料負担者・受取人の関係で決まります。[1]

また、相続人が受け取る死亡保険金には非課税限度額がありますが、相続人以外が受け取る場合にはその適用はありません。受取人の見直しは重要ですが、あわせて誰が保険料を負担しているかも確認する必要があります。[1][2]

配偶者を受取人にするのが、いつでも有利ですか?

常に有利とは限りません。配偶者には「配偶者の税額軽減」がありますが、これは配偶者が実際に取得した正味の遺産額を前提に計算され、申告期限までに分割されていない財産には原則として適用されません。一次相続では税負担を抑えやすくても、将来の二次相続ではこの軽減が使えず、子ども側の税負担が重くなることもあります。配偶者を受取人にするかどうかは、一次相続だけでなく、二次相続や他の相続人との調整まで含めて判断してください。[4]

相続人以外を受取人にすると、何が変わりますか?

相続人以外が死亡保険金を受け取る場合、**「500万円 × 法定相続人の数」**の非課税限度額は使えません。たとえば、内縁の配偶者や、相続人に当たらない親族を受取人にしている場合は、この非課税の適用がないため、想定より税負担が重くなることがあります。受取人を決めるときは、「誰に渡したいか」だけでなく、その相手が相続人に当たるかどうかまで踏まえて決めましょう。[1][2]

なお、税金の種類そのものも、被保険者・保険料負担者・受取人の関係で変わります。[1][2]

親から子へ資金を移して、子どもが保険料を払えば有利になりますか?

そのように単純には言えません。

死亡保険金の税目は、被保険者・保険料負担者・受取人の関係で決まります。契約者名義を変えただけでは課税関係は決まらず、見た目の名義と実際の資金負担がずれていると、想定どおりの税務判断にならないことがあります。

親から子への資金移動を伴う設計は、名義や手続だけで判断せず、実際の資金拠出の関係まで確認したうえで慎重に考える必要があります。[1][6][7]

今入っている生命保険でも、見直しの対象になりますか?

はい、なります。

相続対策として生命保険を活用できるかは、新規加入かどうかよりも、現在の契約関係・受取人・資産全体の状況で決まります。とくに、保険料負担者が認識と一致しているか、受取人が相続人に当たるか、納税資金をほかの現預金でどこまで確保できるかは、見直し前に確認しておきたいポイントです。

相続税の申告は通常、死亡を知った日の翌日から10か月以内なので、相続発生後にあわてないよう、生前の段階で整理しておいてください。[1][2][5]

迷ったら、どんなケースで専門家に相談したほうがよいですか?

少なくとも、保険料負担者が途中で変わっているケース、贈与を受けた資金で保険料を払っているケース、未分割のまま配偶者の税額軽減を見込むケースでは、自己判断を避けたほうが安全です。

死亡保険金にどの税金がかかるかは、被保険者・保険料負担者・受取人の関係で決まり、配偶者の税額軽減も未分割財産には原則適用されません。

こうした事情に当てはまる場合は、契約内容だけで判断せず、税理士などの専門家に相談してみてください。[1][4]

生命保険の相続税対策で失敗しないために

青空の下、芝生に座ってくつろぐ家族

生命保険は、相続税の非課税限度額を活かしやすいだけでなく、納税資金の確保や、誰にどの資金を渡すかの調整にも役立つ手段です。

ただし、生命保険に入っているだけで相続税対策になるわけではありません。大切なのは、誰が保険料を負担しているか、受取人が相続人に当たるか、遺産全体の中でどれだけ現金が必要かを整理したうえで設計することです。[1][2][5]

とくに、相続人以外を受取人にしている場合、受け取った後で家族に分ける前提になっている場合、配偶者を受取人にすれば常に有利だと考えている場合は、想定どおりに機能しないことがあります。

まずは現在の契約内容を確認し、保険料負担者・被保険者・受取人の関係、受取人の相続人該当性、遺産全体の資産構成、申告期限までに必要となる現金を整理してみてください。[1][2][4][5]

保険料負担者が途中で変わっているケースや、贈与資金で保険料を支払っているケース、未分割のまま配偶者の税額軽減を見込むケースでは、自己判断を避けて税理士などの専門家に確認するのが安全です。[1][4]

なお、死亡保険金に相続税がかかる条件や、非課税限度額の基本から確認したい方は、制度の基礎を解説した次の記事もあわせて読んでおくと、全体像をつかみやすくなります。


重要なご注意

本記事は、生命保険を相続税対策に活用する際の一般的な考え方を整理したものです。実際の課税関係や申告要否は、被保険者・保険料負担者・受取人の関係、他の相続財産、遺産分割の状況、各種特例の適用可否によって変わります。

とくに、保険料負担者が途中で変わっているケース、贈与を受けた資金で保険料を支払っているケース、未分割のまま配偶者の税額軽減を見込むケース、受取後の再分配を予定しているケースでは、自己判断を避け、税理士または所轄税務署へ確認したうえで手続きを進めてください。

参考・出典一覧

[1] 国税庁「No.1750 死亡保険金を受け取ったとき」更新日:令和7年4月1日現在法令等

[2] 国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」更新日:令和7年4月1日現在法令等

[3] 国税庁「No.4114 相続税の対象になる死亡保険金(契約上の受取人以外の人が受け取った場合)」更新日:令和7年4月1日現在法令等

[4] 国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」更新日:令和7年4月1日現在法令等

[5] 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」更新日:令和7年4月1日現在法令等

[6] 国税庁「No.4417 贈与税の対象になる生命保険金」更新日:令和7年4月1日現在法令等

[7] 国税庁「No.4417 贈与税の対象になる生命保険金(契約者の名義を変更した場合)」更新日:令和7年4月1日現在法令等

[8] 国税庁「No.4660 生命保険契約に関する権利の評価」更新日:令和7年4月1日現在法令等

[9] 国税庁「No.4102 相続税がかかる場合」更新日:令和7年4月1日現在法令等

[10] 国税庁「No.4157 相続税額の2割加算」更新日:令和7年4月1日現在法令等

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

編集部の資産形成担当。
20代後半ながら金融に関する相談実績多数で、投資信託から株式まで幅広い知識を持ち、今のあなたに必要なことを洗い出し、寄り添った提案を心掛けています。
たけのこ派&猫派です!

目次