【社会保険】【2025年4月開始】社会保険適用拡大で年収100万円のパート主婦に起こる影響とは?

「106万円の壁」がいよいよ本格化!社会保険適用拡大とは?
2025年4月から施行される社会保険の適用拡大により、働き方に悩むパート主婦が増えると予想されています。いわゆる「106万円の壁」がさらに重要になるため、特に年収が100万円前後のパート主婦は、自分自身の働き方を見直す必要があります。
今回の変更は、どのような内容なのでしょうか?また、その影響は具体的にどれほどのものなのでしょうか?

2025年の社会保険制度改正のポイントは?
まずは、今回の制度改正の具体的な内容を確認しましょう。厚生労働省は2025年4月から社会保険(厚生年金・健康保険)の適用範囲を拡大することを決定しています。
参考
厚生労働省「社会保険適用拡大対象となる事業所・従業員について」
厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
改正のポイントは4つ
2025年4月からの適用拡大により、以下の条件をすべて満たす方が社会保険への加入義務対象となります。
- (特定適用事業所)常時使用する被保険者が51人以上の事業所で勤務している
- 週の所定労働時間(就業規則等で定めた1週当たりの労働時間)が20時間以上ある
- 雇用契約が2か月超見込み(更新見込みを含む)
- 月収8.8万円以上(年収換算で約106万円以上)※
つまり、現在年収100万円程度(月収約8万3千円)でパート勤務をしている方は、勤務時間や収入を少しでも増やすと、社会保険加入義務が生じる可能性が高くなるのです。
※通勤手当・残業手当・各種手当等を含む“報酬”ベース/賞与は別途=年収約106万円相当の目安
実際の手取りはどれくらい減るのか?
具体的に手取り収入がどれくらい減少するかを計算してみましょう。
仮に、年収約106万円(月収約8.8万円)の方が新たに社会保険に加入するとします。
社会保険料(厚生年金・健康保険)は、概算で収入の約15%前後が会社と本人の折半で徴収されます。
【試算の前提】
標準報酬月額9.0万円相当
健康保険東京都協会けんぽ(一般)料率9.91%=約4,459円
厚生年金18.30%=8,235円
介護保険該当なし=なし
雇用保険0.6%=540円
4,459円+8,235円+540円=13,234円
このため、毎月の自己負担額は1万3千円程度となります。
年間で考えると、約15万円の手取り減少となり、実際に自由に使える収入は約90万円前後に減ってしまうことになります。(ただし通勤手当の有無・賞与・配偶者特別控除の適用等で上下します。)
扶養から外れるリスクはある?
社会保険加入によるもう一つの注意点として、年収が130万円を超えると夫の扶養から外れるため、自分自身で社会保険料を支払う必要が生じる場合があります。
※健康保険の被扶養者の基準は見込み年収130万円となっている健康保険組合が多いです(※地域/同居等で運用差あり)。税法上の配偶者控除とは別概念で、103万/150万/201万円の“税の壁”と混同しないよう注意しましょう。
106万円を超え社会保険に加入すると、収入次第では世帯全体の保険料負担が大きくなる可能性もあります。

社会保険加入による「メリット」も忘れずにチェック
社会保険加入には手取りが減るデメリットだけでなく、いくつかのメリットも存在します。
年収100万円前後のパート主婦が加入することで得られるメリットを確認しておきましょう。
将来もらえる年金が「増える」
厚生年金に加入すると、将来受け取れる年金額が増加します。
厚生年金は国民年金に上乗せされて支給されるため、加入期間が長いほど、老後に受け取る年金が増えるのが特徴です。
例えば、社会保険適用により10年間加入すると年金額アップが期待できます。(加入期間や掛け金によって変動)
年収106万円で社会保険に加入した場合のシミュレーション
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 年間の社会保険料負担額 | 約13万円 |
| 手取り額(年収106万円時) | 約87万円 |
| 将来の厚生年金(40年加入) | 約23.2万円/年 |
| 厚生年金+国民年金(満額受給時) | 約102.7万円/年(8.5万円/月) |

傷病手当金や出産手当金の充実した社会保障制度
また、健康保険に加入することで得られる傷病手当金も大きなメリットです。
病気やケガなどで長期間仕事ができなくなった際に、給料の約3分の2相当の手当が最大1年6ヶ月間受け取れます。※
これは国民健康保険にはない制度であり、病気やケガへの備えとして非常に重要な保障です。
※待期3日成立後、支給額の目安は“標準報酬日額×2/3”。支給期間通算で最長1年6か月(健康保険組合により給付内容の差異あり)
パート主婦が2025年4月以降考えるべき働き方とは?
では、実際に年収100万円前後のパート主婦はどのような働き方をすればよいでしょうか?
以下のような選択肢があります。
「収入調整」で社会保険適用を回避する選択
社会保険適用を避けたい方は、年収を106万円以下に抑える必要があります。
労働時間を週20時間未満に減らすか、勤務日数を調整して月収を8.8万円(通勤手当含む見込みで調整)未満にすることで、社会保険料の支払いを回避できます。二以上事業所での合算や繁忙期の一時超過の扱いは勤務先へ確認しましょう。
ただし、この選択肢は「収入が増えない」というデメリットも伴うため、慎重な検討が必要です。
「あえて収入を増やす」という積極的な選択
一方、手取りが減るならいっそ働く時間や日数を増やして収入を増やす、という積極的な選択もあります。
社会保険に加入する以上、扶養控除や社会保険料負担を気にせず、思い切って収入を150万円~200万円にまで引き上げることで、手取りの減少分を上回る収入増+将来の年金増額を狙えます。
| 年収 | 住民税 | 所得税 | 社会保険料 | 手取り |
| 103万円 月収約8.7万円 | 数千円 | なし | なし ※扶養内 | 約100万円 |
| 106万円 月収約8.8万円 | 数千円 | なし | 約150,000円 ※一定条件においてあり | 加入の場合:約90万円 未加入の場合:約105万円 |
| 130万円 月収約10.5万円 | 約10,000~15,000円 | なし | 約180,000円 ※130万円を超えると加入 | 加入の場合:約110万円 未加入の場合:約128万円 |
| 140万円 月収約11.5万円 | 約15,000円~30,000円 | なし | 約200,000円 | 約117万円 |
| 150万円 月収約12.5万円 | 約20,000~40,000円 | なし | 約250,000円 | 約120万円 |
パート主婦が知っておきたいポイントと準備
社会保険の適用拡大に伴い、年収ラインの把握だけでなく、今後どのように働きたいか、家庭内でしっかり話し合うことも重要です。
- 自分の理想とする働き方を明確にする
- 世帯全体で税負担や手取り収入への影響をシミュレーションする
- 将来受け取れる年金のメリットも踏まえて判断する
【Q&A】2025年社会保険適用拡大の疑問に答える
そして、ここまでの内容をQ&A形式にまとめました。
2025年の社会保険制度改正で何が変わるの?
- 従業員数51人以上の企業
- 勤務時間:週20時間以上
- 月収8.8万円以上(年収約106万円以上)
の人が社会保険加入の対象になります。
適用拡大により、年収100万円前後のパート主婦にも影響が出ます。
年収が106万円を超えると手取りはどれくらい減る?
社会保険料の自己負担で年間約12〜14万円ほど手取りが減少し、実質的な自由に使える収入は約90万円前後になります。
社会保険に加入すると扶養から外れる?
年収130万円を超えると、配偶者の扶養から外れて自身で保険料を支払う必要があります。
106万円を超えただけでは即扶養から外れるわけではありませんが、条件次第では将来的に注意が必要です。
社会保険に加入するメリットはある?
あります。
将来の厚生年金が増えるほか、病気やケガで働けなくなったときの傷病手当金、出産時の手当金などが支給され、保障が充実します。

手取りを減らさずに社会保険適用を避ける方法は?
週20時間未満の勤務にするか、月収を8.8万円未満に調整することで適用を回避できます。
ただし、その分収入は増えません。
「手取りが減るくらいならもっと働く」選択はあり?
十分ありです。
年収を150〜200万円にまで引き上げれば、社会保険料を払っても手取りが増えるうえ、将来の年金も増えるため、積極的な選択として有効です。
まとめ:社会保険適用拡大に向けて今から準備を
2025年4月の社会保険適用拡大は、年収100万円前後で働くパート主婦にとって生活や家計に大きく影響します。
制度変更による手取り減少と、社会保障が充実するという二面性を理解したうえで、自分や家族にとってベストな働き方を考えることが重要です。
適用拡大が始まる前に、家計や働き方を見直して、適切な準備を始めましょう。

本記事は一般的情報の提供です。加入可否・扶養判定・料率は勤務先・保険者(協会けんぽ/健保組合)・税務署へ必ず確認してください