保険の種類&選び方、組み合わせを解説|あなたが検討すべき保険はどれ?

人生には、思いがけないリスクやお金の悩みがつきものです。
もしもの時、家族や自分の生活を守るために保険が必要かどうか、悩む方も多いのではないでしょうか。
しかし、保険にはさまざまな種類や仕組みがあり、「自分に本当に必要な保障は何か?」「どんな保険を選べば無駄がないのか?」と迷う声も少なくありません。
本記事では、保険の基本的な種類とそれぞれの特徴をわかりやすく整理し、「どんな人が、どの保険を、どう選ぶべきか」という実践的なステップを徹底解説します。
また、NISAやiDeCoなどの資産形成制度と保険をどう組み合わせれば、家計全体でムダなく効率的にリスク管理できるかも紹介。

保険は必要以上に加入する必要はないものの、多くの方が入るべきもの。
これから選ぶ人も、すでに加入している人の見直しにも役立つ内容となっています。
目的 | ニーズ | 保険の種類 | おすすめな人 |
死亡保障 (死亡した場合の遺族保障) | 一定の時期の保障が欲しい | 定期保険 | 一定期間だけ大きな保障が欲しい人 |
満期保険金を受け取りたい | 養老保険 | 保障と貯蓄の両方を兼ね備えた保険に入りたい人 掛け捨てがもったいないと思う人 | |
一生涯保証が欲しい | 終身保険 | 一生涯、保障がほしい人 保障も貯蓄もほしい人 | |
遺された家族の生活費を確保したい | 収入保障保険 | 子育て世帯 家計を支えている人 個人事業主 | |
医療保障 | 病気やけがに備えたい | 医療保険 | 幅広い病気やケガに対して保障を受けたい人 |
がんに備えたい | がん保険 | がんに対して不安がある人 | |
就業不能保障 | 病気やけがの場合の収入減少に備えたい | 就業不能保障保険 | 傷病手当金が受けられない自営業やフリーランス |
介護保障 | 介護に備えたい | 介護保険 | 要支援・要介護状態に備えたい人 |
老後保障 | 老後の生活費を確保したい | 個人年金保険 | 個人年金保険料控除を活用しながら、老後の年金生活に備えたい人 公的年金が少ない人 |
教育費保障 | 教育費を確保したい | 学資保険 | 教育費を確実に貯めたい人 |
「生命保険」は死亡に備える保険:家族の生活を守る
死亡保障を目的とする生命保険は、被保険者が亡くなった場合に所定の保険金や給付金が支払われる商品です。
家計を支える立場の人が万一のとき、遺された家族の生活を一定範囲内で支えることができます。
生命保険には主に、
- 定期保険(掛け捨ての死亡保険)
- 養老保険(貯蓄型の死亡保険)
- 終身保険(一生涯続く死亡保険)
- 収入保障保険
に分かれます。
それぞれ見て行きましょう。
定期保険(掛け捨ての死亡保険)
定期保険は保険期間があらかじめ決まっている死亡保険で、その一定期間内に被保険者が死亡した場合にのみ保険金を受け取れます。
期間中に何事もなければ満期や解約時に受け取れるお金はなく、いわゆる掛け捨て型の保険です。
その分、終身保険などと比べて保険料は割安に設定されています。
契約期間 | メリット | デメリット | |
年満了 | 保険加入を年数で定める 例:10年、20年 | 保険料が安く済む | 保障を続けたい場合は更新が必要 |
歳満了 | 設定した年齢を迎えた時点で保険期間満了とする 例:60歳満了、65歳満了 | トータルでの保険料が安くなる傾向 更新の必要がない | 加入時の保険料が高い |
契約期間には、10年など年数で区切る「年満了」と、60歳など一定の年齢まで保障が続く「歳満了」があります。
年満了型は契約時の保険料を抑えやすい一方、保障を延長したい場合は更新が必要(そして保険料は高くなることがほとんど)です。
歳満了型は更新の手間がかからず、トータルの保険料が抑えられる傾向にありますが、加入時の保険料はやや高めになります。

定期保険は、大きな保障が必要な期間があらかじめ決まっている人に向いています。
例えば子育て期間が代表例で、その間手厚く保障を確保したい場合に適した保険と言えるでしょう。
養老保険(貯蓄型の死亡保険)
養老保険は死亡保障と貯蓄性の両方を備えた保険です。
保険期間内に被保険者が亡くなった場合には死亡保険金が支払われ、満期まで生存した場合には満期保険金を受け取れます。
保障と貯蓄機能を兼ね備えているため、保険料が無駄にならない商品を求める人に適しています。

一方、掛け捨て型の定期保険に比べて保険料は高めですし、終身保険に比べると運用利回りが低いデメリットがあります。
一定期間後に資金を受け取りたい方や、定期保険では掛け捨てがもったいないと感じる方に向いた保険です。
終身保険(一生涯続く死亡保険)
終身保険は死亡保障が一生涯続くタイプの生命保険です。
契約時に決めた保険料は原則として生涯変わらず、途中で更新する必要もありません。
また、中途解約すれば解約返戻金(解約時に戻ってくるお金)を受け取れるため、万一に備えながら老後資金の準備に活用することも可能です。

定期保険や収入保障保険より保険料は割高ですが、一生涯にわたる保障と貯蓄性のメリットがあります。
終身保険は、保障を一生確保したい人や、万一の際に葬儀費用や家族への資金を残す目的で貯蓄性も重視したい人に向いています。

収入保障保険(年金形式で受け取る死亡保険)
収入保障保険は、被保険者が亡くなった際に一定期間にわたり年金形式で保険金を受け取れる死亡保険です。
遺族は毎月または毎年定額の給付金を受け取れるため、生活費として計画的に活用できます。
定期保険に比べ同じ保障額であれば保険料が割安に設定されている反面、契約時に定めた給付期間が終わるとその後に保障を延長することはできません。
そのため、「子どもが独立するまで」など一定の期間に限定して生活保障が欲しい方向けの保険と言えます。

小さなお子さんがいる子育て世帯や一家の生計を支える立場の人にとって、収入保障保険は心強い保障となるでしょう。
自営業者で、公的な死亡保障(遺族年金や弔慰金など)が手薄な方にも適しています。
病気やケガに備える保険:治療費や生活費に備える

医療保障を目的とする保険には、幅広い病気やケガに備える医療保険のほか、がん保険や三大疾病保険(がん・心疾患・脳卒中)など特定の疾病に特化した商品も存在します。
日本人が一生のうちにがんと診断される確率は、男性が65.5%、女性が51.2%と、2人に1人はがんになるという統計データもあります(国立研究開発法人国立がん研究センターの2019年・2022年調査)。
こうした背景から、がんに備える保険へのニーズも高まってきました。

また、心筋梗塞や脳卒中など生活習慣病への備えについては、特約(オプション)でカバーできる医療保険商品もあります。
自分や家族の健康リスクに応じて、必要な保障を検討するとよいでしょう。
医療保険(病気やケガの治療に備える保険)
医療保険は、被保険者が病気やケガで入院・手術などをした際に給付金を受け取れる民間の保険です。
公的医療保険では賄いきれない高額な治療費への備えとして有効で、思わぬ出費による家計への影響を軽減できます。
実際、日本には高額療養費制度(1か月の医療費自己負担に上限を設ける公的制度)があるため、完全にはカバーできないものの入院・手術しても1ヶ月で支払う医療費は概ねその範囲で済むケースが大半です。
医療保険がカバーできる範囲としては、
- 差額ベッド代(個室・大部屋が空いていない等で発生する)
- 入院時の食事代
- 先進医療の技術料(例:重粒子線治療など、健康保険外の先進医療部分)
- 通院交通費・家族の宿泊費
- 収入減への備え(長期入院・療養中の休業による収入減)
といった部分で、医療保険に加入していれば、このような負担にも備えることができます。
加入している医療保険の保障内容によって、入院費や手術費の全額または一部が給付金でカバーされ、商品によっては通院治療費も対象となります。
しかし、保険会社によって入院日数や手術の種類ごとに細かな給付条件が異なるため、契約前に「どの範囲まで保障されるか」を確認することが大切です。
がん保険(がんに特化した医療保険)
がん保険は、被保険者ががんと診断された場合にまとまった給付金を受け取れる保険です。
大きなくくりでは医療保険の一種ですが、日本人の死因で常に上位に挙がる「がん」に手厚く備えたいニーズに応えるため、がんに特化した保険商品が設計されています。
がんの治療は長期にわたる場合が多く、高額な治療費や療養費が必要になることも少なくありません。
がん保険で受け取った給付金は治療費や生活費に充てることができ、家計への負担を和らげながら治療に専念できる環境を整えてくれます。
ただし、がん保険は保障対象が「がん」に限定され、がん以外の病気では給付金を受け取れない点には注意が必要です。

特に家系にがん患者がいる場合や、ご自身ががんになるリスクを不安に感じている場合は、がん保険への加入を検討すると良いでしょう。
働けなくなった場合に備える就業不能保険:収入減少をカバー
就業不能保険は、病気やケガで長期間働けなくなり収入が減少した場合に、所定の給付金を受け取れる保険です。
働けない間の住宅ローンや生活費を保険金で補填できれば、治療に専念しつつ家計の破綻を防ぐことができます。
公的な制度だけでは補いきれない収入減をカバーできるのがメリットで、自営業やフリーランスなど会社員のような傷病手当金(健康保険から支給される所得補償)がない人にとって心強い保障と言えます。
一方で、給付を受けるには所定の就業不能状態が継続して一定期間経過するといった条件が付くことがあります。
また、「働けない状態」の定義が保険会社ごとに異なり、たとえば「自宅療養」や「時短勤務」は対象外など、細かい条件が多く給付のハードルが意外と高い場合もある点に注意しましょう。

なお、就業不能リスクへの備えとしては、所定の高度障害状態になった場合に一時金が支払われる「身体障がい保障保険」もあります。
介護保険:介護の経済的負担を軽減する
介護保険は、被保険者が要支援・要介護状態※になった際に給付金を受け取れる保険です。
要介護状態になると、食事や排泄の介助、リハビリや施設利用などに毎月まとまった費用がかかります。
民間の介護保険に加入していれば、そうした新たに発生する介護費用による家計負担を給付金で軽減することができます。
給付条件は公的介護保険制度で定められる要介護度区分(要支援1〜要介護5など)に連動するケースが一般的です。
保険会社によっては独自の基準を採用している場合もあるため、検討する商品の支給条件がどの程度の介護状態を対象としているかを確認しておきましょう。
なお、民間の介護保険に加入する最大のメリットは、公的な介護保険制度では賄いきれない介護費用を備えられる点です。
例えば、
- 施設の居住費・食費
- 高額な民間施設(有料老人ホーム等)の費用
- 日常生活の雑費や嗜好品費
など。
公的給付だけでは不足する部分を民間の介護保険で補えれば、より手厚い介護サービスを受けやすくなるでしょう。
一方、介護保険のデメリットは、保障を受け取るための基準が厳しい点です。
要介護度によっては保険金が支払われない場合もあり、比較的軽度の状態では給付の対象とならないことがあります。

保障が開始されるハードルが高いため、契約の際は「どの段階から給付対象になるのか」をよく理解しておく必要があります。
※要支援・要介護:公的介護保険制度における介護の必要性を示す区分。要支援は日常生活動作の一部に支援が必要な状態、要介護は常時介護を要する状態を指します。
個人年金保険(公的年金を補完する保険)
保険商品 | メリット | デメリット | おすすめな人 |
個人年金保険 | 年金を補填できる 個人年金保険料を控除できる | 途中で解約すると、解約返戻金が支払い済みの保険料の総額よりも少ないケースがある | 個人年金保険料控除を活用しながら、老後の年金生活に備えたい人 |
個人年金保険は、契約時に定めた一定期間の経過後や特定の年齢から、年金形式で給付金を受け取れる保険です。
被保険者が年金受取開始前に亡くなった場合は、払い込んだ保険料相当額の死亡保険金が支払われるのが一般的です。
公的年金を補完する任意加入の私的年金であり、老後の生活資金を計画的に準備したい人に適しています。

また、個人年金保険料は生命保険料控除の対象(個人年金保険料控除)となり、支払保険料に応じて一定の税金の優遇措置を受けることができます。
受け取り期間 | 税金の種類 | 被保険者の死亡時 | 税金の種類 | |
確定年金 | 生死にかかわらず契約時に決めた一定期間 | 年金方式:雑所得 一時金方式:一時所得 | 遺族に年金もしくは一時金が支払われる | 1年目:贈与税 2年目以降:所得税 |
有期年金 | 生存している限り契約時に決めた一定期間 | 雑所得 | 遺族に支払いはなし | ー |
終身年金 | 生存している限り | 雑所得 | 遺族に支払いはなし | ー |
個人年金保険の給付形態にはいくつかの種類があります。
例えば、契約時に定めた一定期間は生死にかかわらず受け取れる「確定年金」、被保険者が生存している限り一定期間受け取れる「有期年金」、生きている限り一生涯受け取れる「終身年金」といった違いです。
運用スタイル | 最低保証 | |
定額個人年金保険 | 契約時の予定利率で支払った保険料を運用するので年金は一定額 | あり |
変額個人年金保険 | 運用実績により年金額が変動する | なし |
また、運用方法によって、将来受け取れる年金額があらかじめ確定している「定額型」と、運用実績に応じて年金額が変動する「変額型」に分類されます。
自分の資産運用の考え方やリスク許容度に応じて、適切な商品タイプを選ぶと良いでしょう。
一方で、中途解約すると解約返戻金が払い込んだ保険料の総額を下回るケースがある、またiDeCoという強力な制度があるため、主にリスクを取らないで貯蓄志向の方向けといえるでしょう。

教育資金を準備する学資保険:子どもの教育費に備える
学資保険は、子どもの教育資金に備えるための貯蓄性の高い保険です。
契約時に定めた時期(例:入学時や18歳到達時など)に祝い金や満期保険金を受け取れる仕組みで、計画的に教育費を貯めることができます。
多くの学資保険では、契約者である親が死亡または高度障害(生活に支障をきたす重度の障害)状態になった場合、以降の保険料払い込みが免除される特約(保険料払込免除)が付いています。

保障と貯蓄を兼ね備えており、確実に教育資金を準備したい人に適した商品と言えますが、NISAとの使い分けが肝要です。
以下の記事も参考に、ご自身がどちらにするのかを決めると良いですよ。

保険を選ぶときの基本ステップ :はじめの一歩ガイド
保険を検討する際は、いきなり商品比較を始めるのではなく、まず自分に必要な保障を明確にすることが大切です。
以下のステップで順を追って考えていけば、過不足のない保障をムダなく確保できます。
1. リスクを棚卸しする(自分の「もしも」を言語化)

まず、自分や家族に起こり得るリスクを書き出してみましょう。
「どんなイベントが起こりうるか」「その確率と家計への影響(金額)」を整理することで、どの保障を優先すべきか見えてきます。
死亡リスク
扶養家族の人数、住宅ローンの残高、今後かかる教育費などを確認。
万一のとき、誰にどれだけのお金が必要になるか洗い出します。
病気・就業不能リスク
自営業か会社員かによって、公的保障が異なります。
会社員なら傷病手当金(最長1年6か月の給与補償)や障害年金を受け取れる場合がありますが、自営業者はこれらがないためリスクが大きくなります。
仕事を長期間休んだ場合の収入減に備えましょう。
介護・老後リスク
親族に要介護状態になった人がいるか、公的年金で老後資金がどの程度まかなえるか、退職金の有無などを確認。
自分が介護状態になった場合や、長生きした場合の資金計画もリスクとして考えます。
これらを「もし○○になったら、いくら必要?」と具体的に言語化してリスト化すると、自分に必要な保障がクリアになります。起こり得るイベントそれぞれについて、発生確率と金銭的インパクトを評価してみましょう。
例えば、小さな子どもがいるなら死亡リスクの備えが最優先、高額な医療費が心配なら医療リスクへの備えが優先、といった具合です。
2. 公的制度と手元資金を確認し、ギャップを数値化する
次に、公的な保障制度や自身の貯蓄でどこまでカバーできるか確認しましょう。
という考え方が、保険選びで失敗しにくいコツです。
もちろん将来はどうなるか分かりませんが、どうなる確率が高い/どうなりそうといった部分を加味して決断することが重要です。
公的医療保険の高額療養費制度
医療費が高額になっても、自己負担は原則ひと月約8~9万円が上限で収まります。
つまり、健康保険が効く治療なら月9万円程度までで済み、それを超えた分は後から払い戻されます。
ただし、差額ベッド代(個室費用)や先進医療の費用など保険適用外の部分は高額療養費の対象外で全額自己負担です。
まず、ご自身が気になることに対して、公的医療保険でどこまで補えるか把握しましょう。
公的保障と貯蓄の確認
病気やケガで働けなくなった場合、会社員であれば一定期間給与の一部を補償する制度(傷病手当金)が使えますし、公的年金から障害年金が出ることもあります。
失業手当や遺族年金など、公的制度を調べてもらえるお金を書き出します。
また、すぐに使える緊急予備資金として生活費何か月分の貯蓄があるかも重要です。

一般に生活費の6か月分は「生活防衛資金」として確保しておくことが望ましいと言われます。
少なくとも3か月分の生活費が手元にあれば、いざという時ひとまず生活は維持できます。
不足部分の算出
上記の公的制度で賄える額や、自分の貯蓄額と、ステップ1で洗い出した必要資金を照らし合わせます。
例えば、医療費リスクについては
といった具合に、不足額を具体的に計算します。
収入が絶たれるリスクには
など、数字でギャップを把握することが大事です。
3. 必要保障額と期間を決める
ステップ2までで「どのリスクに対していくら不足するか」が分かったら、必要な保障額と保障期間を見積もります。
これによって、どんな種類の保険商品が適しているか自ずと絞られてきます。
死亡保障額の試算
例えば一家の大黒柱に万一のことがあった場合、遺族の生活費が毎月どれくらい不足するかを計算します。
その月額不足分に必要な年数(子どもが独立するまで○年間など)をかけ、さらに葬儀費用や子どもの教育費など一時金で必要な額を加えると、だいたいの死亡保障の必要額が出せます。
医療保障額の試算
民間医療保険で備えるべき金額は、「平均的な入院日数 × 1日あたりの自己負担費用」に加え、入院が長引いた場合の生活費なども考慮します。
たとえば平均入院日数が10日程度なら、「自己負担1日5,000円×10日=5万円」にプラスして、収入減を補う生活費分も見積もる、といった計算です。
就業不能保障額の試算
働けなくなった場合に備える金額は、会社員か自営業かで公的支援が違います。
自営業なら収入がゼロになるため生活費の半年〜1年分程度、会社員なら傷病手当金などで賄えない不足分を、保険でカバーする金額として設定します。
期間は「最長で何年間給付が必要か(例:定年まで)」を想定します。
こうして「不足額✕期間」が明確になると、保険商品の種類も絞り込みやすくなります。
例えば、数年間だけ大きな保障が欲しいなら定期保険、一生涯の保障と貯蓄性が欲しいなら終身保険、といった具合に方向性が見えてくるのです。
4. 保険の「機能」で商品タイプを絞り込む

保険商品にはさまざまなタイプがありますが、自分の目的に合った機能を持つ商品を選ぶことが重要です。
以下に主な目的別に、検討すべき保険の型と向いている人の例をまとめます。
目的 | 合う主な型 | 検討すべき人の例 |
---|---|---|
一定期間だけ大きな死亡保障 | 定期保険 | 子育て中や住宅ローン返済中の家庭 |
死後も貯蓄性を持たせたい | 終身保険/養老保険 | 葬儀費を用意しつつ資産形成もしたい人 |
遺族の生活費を月々カバー | 収入保障保険 | 共働きで一方が主たる生計維持者の場合 |
幅広い病気・ケガに備える | 医療保険 | 入院費や差額ベッド代を賄いたい人 |
がん治療コストに備える | がん保険 | 家系にがん患者がいる/長期治療が不安な人 |
就業不能時の収入断絶に備える | 就業不能保険 | フリーランス・自営業の人 |
介護費の自己負担に備える | 介護保険 | 親族に要介護者がいる/将来単身予定の人 |
老後資金の計画・準備 | 個人年金保険 | 公的年金だけでは不安な人 |
教育費の積立 | 学資保険 | 受験時期に必ずまとまった資金が欲しい人 |
上記のように、「自分は何のために保険に入るのか」を明確にしておけば、自ずと商品の型は絞られてきます。
例えば住宅ローンや子育て期間中だけ大きな保障が欲しいなら定期保険、亡くなった後に保険金を残しつつ貯蓄もしたいなら終身保険や養老保険、といった具合です。

その上で、NISAやiDeCoなどの他の資産形成手段と比較して、どうするのかを決めると良いですよ。
5. 商品の比較では「続けられる保険料」と“給付条件”を最重視
具体的に商品を選ぶ段階では、保険料と保障内容(給付条件)をしっかりチェックしましょう。
無理なく支払える保険料
保険料の目安は手取り収入の5〜10%以内が一つの基準です。
毎月の手取りのうち保険料があまりに高額だと、貯蓄や他の支出を圧迫してしまいます。
「手取りの1割以内」であれば家計に大きな負担をかけず継続しやすいと言われますが、これも都市部と地方で賃貸の家計に占める比率が異なったり、NISAなどの他の試算運用に回すなどで前後します。

高すぎる保障を欲張ると、途中で保険料が払えず解約する羽目になり、解約返戻金も払込保険料より少なくなることが多いです。
それでは本末転倒なので、無理のない範囲で保障を組みましょう。
各社で異なる給付条件
同じような商品でも、給付金が支払われる条件(約款上の定義)は会社ごとに異なります。
例えば就業不能保険なら「何日連続働けなかったら支給か」、介護保険なら「要介護2以上で支給」など細かな違いがあります。

パンフレットや重要事項説明書の注釈まで読み、どういう場合に保険金が出るのか/出ないのかを必ず確認しましょう。
複数社で見積もり比較
保険は同じような保障内容でも会社によって保険料が異なります。
必ず複数社で見積もりを取り比べましょう。
その際、「払込期間(いつまで保険料を支払うか)」も確認ポイントです。
例えば終身保険でも60歳払済(60歳までに払い終える)タイプと終身払い(生涯ずっと払い続ける)タイプでは、月々の保険料や総支払額が大きく変わります。
また解約時のペナルティ(解約返戻金が少なくなる期間)についてもチェックしておきましょう。
モデルケース別・おすすめ組み合わせを紹介!【会社員/フリーランス】

最後に、家族構成や職業によって保険と資産形成の組み合わせ例をいくつか紹介します。
それぞれのモデルケースに合った保障の組み立て方を参考に、自分のプランを考えてみましょう。
30代共働き・子育て世帯
共働き・子育て世帯は、収入が多くても「保険も投資も満額」というプランは、家計への負担が大きくなりがちです。
無理なく、将来への備えもバランスよくできる設計を目指しましょう。
- 死亡保障は「必要最小限+分担」が基本
- 夫婦ともに大きな保障は不要。主な収入源となる方は「2,000万円・20年」、配偶者は家計や家庭での役割に応じて減額するなど、メリハリをつけて保険料負担を抑える。
- 必要額は「今後かかる教育費や生活費の不足分」を基準に逆算。
- 収入保障保険は「遺族年金や配偶者収入で足りない分だけ」
- 公的保障や手元の貯蓄、配偶者の収入を差し引いて、「月10万円×15年」など実際に不足する部分だけを補う。
- 夫婦ともに働いていれば、どちらか一方に絞る選択もOK。
- 医療保険は「最低限+必要なオプションのみ」
- 公的な高額療養費制度があるので、基本はシンプルなプランで十分。
- 入院日額5,000円や、1入院あたり上限30万円などコスパ重視で選び、差額ベッド代や先進医療特約は必要に応じて追加。
- つみたてNISA/新NISAは「家計に無理のない範囲」で
- 共働きでも満額投資はかなり大変。夫婦で月5万円(年間60万円)程度の積み立てでも十分に将来設計が可能。
- 余裕が出てきた時に増額すればOK。まずは「続けられる金額」を最優先。
- iDeCoも「所得控除メリットが高い人」だけでOK
- 必ずしも夫婦とも上限までやる必要はなし。所得税率が高い方だけ、月23,000円(会社員の場合)程度で十分。
- 家計状況に応じて無理せず調整を。
こうしたポイントを押さえておけば、「必要な分だけ備える」ことができ、家計も将来も守ることができます。
特に教育費や住宅ローンなどの負担が重い時期は、積立額を減らしたり一時的にストップしたりする柔軟さも大切です。
年に一度は家計の見直しを行い、過剰な保険や無理な投資になっていないかチェックしましょう。
20代独身・貯蓄重視
20代独身で貯蓄を重視する場合、「保険は最小限、余剰資金はできるだけ投資や貯蓄にまわす」というシンプルな設計が基本です。
必要な保障を押さえつつ、将来に向けた資産形成を優先しましょう。
- 医療保険は「最低限+差額ベッド代を意識」
- 高額療養費制度があるため、大きな医療リスクはカバーされていますが、差額ベッド代や細かな自己負担分に備えて「日額5,000円」程度の入院保障に加入するのが現実的です。
- 若いうちに加入すれば、その後病気になっても保険料は加入時のまま据え置きとなります。
- 就業不能保険は「自分の収入断絶リスク」に備える
- 独身のうちは自分の収入が止まると生活が一気に厳しくなるため、就業不能保険(免責期間60日、月10万円補償、定年まで継続タイプ)を検討。
- うつ病など精神疾患にも対応している商品を選ぶと、より安心です。
- つみたてNISAは「若さを活かした長期投資」
- 年間120万円を上限に、早いうちからコツコツ投資信託を積み立てるのが◎。
- 20代から始めることで複利の力が最大限活き、将来の資産形成に有利です。
- 終身保険など貯蓄型保険は「独身時代は後回しでOK」
- 流動性が高い資金や運用を優先し、扶養家族ができたタイミングで必要に応じて見直すのが無難です。
このように、
- 保険料は月1万円以内に抑える
- 余裕資金はなるべく投資や貯蓄にまわす
というスタイルが、20代独身・貯蓄重視の基本パターンです。
若く健康なうちは、重い保障や貯蓄型保険よりも、「まずは自分の身を守る最低限+将来に備えた運用」に注力。
ライフステージが変わったとき(結婚・出産など)に、その都度保障内容を見直していく柔軟さも大切です。
フリーランス・自営業
自営業・フリーランスの場合、会社員と比べて社会保険の保障が薄いため、「もしものとき」の備えを厚めにしておくことが重要です。
自分と家族を守りつつ、資産形成も効率的に進めましょう。
- 就業不能保険は「長期の収入断絶リスク」に備えて厚めに
- 会社員と違い、労災や傷病手当金がないため、病気やケガで働けなくなった場合の生活費をカバーできる「免責90日以内、給付金月20万円、最長65歳まで」のタイプを検討。
- 長期入院や療養になっても収入が絶たれないよう、手厚く設定します。
- 収入保障保険で「家族の生活費」をサポート
- 公的な遺族年金は少額なため、万一の場合に遺された家族の生活費が不足しがちです。
- 月15万円程度の保障を設定し、子どもの成長や配偶者の老後までカバーする期間で契約。
- 医療保険+がん保険は「入院・治療の長期化」に備える
- 会社員のような医療休職中の収入補償がないため、入院給付金や通院保障を手厚く準備。
- がん保険は、一時金が複数回もらえるタイプや、治療が長期化したときの生活費も支える内容を重視。
- iDeCoは「満額活用」で節税&老後資金を確保
- 自営業者は月68,000円まで拠出でき、掛金全額が所得控除になるため、住民税・所得税の大きな節税効果あり。
- 将来の年金の足しとしてフル活用がおすすめ。
- NISA(成長投資枠など)は「余剰資金の効率運用」に活用
- 事業で生まれた余裕資金を非課税運用に回すことで、将来の資産形成を強化。
- 新NISAの成長投資枠(年間240万円まで)を使えば、個別株やETFなど幅広い運用が可能です。
このように、社会保険が手薄な分を民間の保険でカバーしつつ、余裕資金は非課税制度を活用して着実に運用するのが、自営業・フリーランスの王道スタイルです。
上記の組み合わせで、30代ならざっと月額1~1.5万円くらいの保険料となる場合が多いです。

家計や事業の状況によっては、保障額や投資額を柔軟に調整し、「備え」と「運用」の両立を心がけましょう。
定期的な見直しも忘れずに!
50代後半・退職まで10年
50代後半、退職まで10年を切ると、保険や資産運用も「守り」と「身軽さ」を重視した設計が現実的です。
これまで積み上げてきた保障を“今後本当に必要な分”に整理し、老後や相続も意識した見直しをしていきましょう。
- 逓減定期保険(短期の定期保険)は「残りローンのカバー分だけ」
- 住宅ローンの残債があと数百万円、期間も数年だけ残っている場合は、必要最小限の逓減型定期保険でカバー。
- 数年単位の短期・掛け捨てタイプなら、保険料を抑えつつ万一時も安心。
- 医療保険・がん保険は「終身+必要な保障にしぼる」
- 現在加入中の医療保険・がん保険を見直し、収入があるうちに一生涯保障タイプ(終身型)へ切り替えや増強を検討。
- 保障は「入院日額5,000円+先進医療特約」など、必要な分だけに絞り、無駄な特約は減らす。
- 高齢になるほど新規加入や見直しが難しくなるため、60歳未満の今が見直しのラストチャンス。
- iDeCo・NISAは「ムリせず老後まで活用」
- iDeCoは60歳以降に受取開始を選択できるため、運用益を狙って“しばらく運用を続ける”のも一案。
- NISAは非課税期間が無期限になったため、定年後も余裕資金を成長投資枠などで運用し続けられる。
- 終身保険(短期払い済み型)は「相続や葬儀費用対策」に限定活用
- 相続や葬儀費用の準備として、解約返戻金が低めの終身保険に500万~1,000万円程度加入し、退職までの残り年数で払い済みにする方法も。
- 退職後に保険料の負担がなくなる点がメリット。
この世代では、保障は徐々に縮小・整理し、余裕資金は相続・老後資金・流動性確保にシフトするのが現実的な設計です。
退職金や年金でカバーできる分は民間保険を整理し、残りのリスクをピンポイントで備えましょう。

「いま必要なもの・老後の安心・身軽さ」のバランスが大切です。
大きな保障から“本当に必要な分”へシフトしていきましょう。
終わりに|保険のベストバランスは“定量的な見える化”で見つかる

保険は「万一の備え」という“守り”の役割だけでなく、人生のどこで・どんなリスクにどう備えるかという家計設計の一部です。
本記事では、目的別に保険の種類と選び方の基本ステップ、さらにNISAやiDeCoなどの資産形成制度と組み合わせた現代的なリスクマネジメント戦略を解説してきました。
大切なのは、「なんとなく不安だから」という気持ちではありません。
家族構成やライフプラン、公的保障や資産状況を整理し、必要な保障を“見える化”すること。
商品ありきで考えず、公的制度や投資枠も活用しながら、“必要最小限の保険”と“最大限の資産形成”をバランスよく設計していくことが、これからの時代の賢い家計防衛です。
また、ライフステージや資産状況は年月とともに変わります。
定期的な見直しや複数社での比較を惜しまないことで、保障の過不足や無駄なコストを防ぎましょう。

本記事が、みなさんの保険選びと家計設計のヒントとなり、安心して未来に備える一助となれば幸いです。
補足
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の保険商品を推奨・勧誘するものではありません。ご契約の際は必ず各保険会社の約款・重要事項説明書を確認し、保障内容や注意点をご理解いただいた上で判断してください。