企業の転勤制度には人材育成やモチベーション向上などの目的がある一方、家族生活への影響や転勤を望まない従業員の増加などの課題も指摘されてきました。昨今ではそうした意見を受け、転勤や単身赴任の廃止を検討する企業も増えつつありますが、依然として制度が残っている企業も少なくありません。
働き方における転勤の有無はキャリアだけでなく、生活設計全般に大きな影響を与えます。そのため、転勤の可能性が高い人ほど慎重にライフプランの策定を行い、自身の身の振り方について考えることが大切だといえるでしょう。本記事では転勤制度のメリット・デメリット、そして転勤がある人に向け、ライフプラン策定の重要性について紹介します。
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昔ながらの転勤制度が変わりつつある
昨今、転勤や単身赴任の廃止を決定する企業が増えています。これまで転勤は主に以下のような目的のもと、さまざまな企業で実施されてきました。
・人材の適正配置
・人材育成
・モチベーション向上
・不正の予防および発見
とはいえ、転勤は本人だけでなく配偶者や子どもなど生活におよぼす影響が大きく、転勤が原因で家族内でもトラブルに発展するケースが多かったこともまた事実です。そうした問題点やウェルビーイングの観点から、転勤や単身赴任といった制度を「時代遅れ」と捉え、制度の縮小あるいは廃止に踏み切る企業が増えています。
また、共働き世帯の増加に伴い、転勤自体を拒否する従業員の割合も増えており今後も転勤制度は縮小傾向にあるといえるでしょう。
転勤のない仕事に転職するメリット
ここでは転勤のない仕事に転職するメリットを3つ、紹介します。
仕事での人間関係を築きやすい
転勤がない仕事に就くことで、長期的に同じ職場で働き続けられるため、同僚や上司、部下との人間関係を深めやすくなります。人間関係が安定することでコミュニケーションがスムーズになり、チームワークの向上も見込めるでしょう。
また、社内に限らず、取引先の担当者や顧客、地元のビジネス関係者とも継続して関係性を築けるため、仕事をする上で有利に働きます。
家族に負担がすくない
転勤がなければ、家族や親しい人と離れ離れになるというストレスを抱える心配がありません。就職しても慣れ親しんだ土地で生活を続けられるとなれば、安心感を得られるほか、万が一の際も負担を感じずに済むでしょう。独身であればともかく、転勤に伴って家族全員が引っ越しを余儀なくされるとなれば、子どもの転園・転校やパートナーにも大きな負担をかけることになります。
かといって、単身赴任を選択すれば生活費がかさむほか、一人暮らしのストレスを抱える恐れがあります。転勤がない職に就くことは家庭生活の安定に繋がるほか、家族のためにもよい選択肢となるでしょう。
住まいや教育などライフプランを立てやすい
転勤に合わせて住まいを移す必要がないため、長期的な住まいの確保はもちろん、子どもの教育、老後の生活設計などについて計画を立てやすくなります。
特にマイホームの購入は一生に一度あるかどうかの大きな買い物であることから、転勤の不安を抱えながら購入するより、転勤の心配がない状態で購入を検討した方が冷静な判断が下しやすいでしょう。
また、地域のコミュニティとのつながりも継続しやすいため、地域に馴染みながら生活できる点も大きなメリットといえます。
引っ越し費用の負担を抑えられる
転勤がなければ、予想外の引っ越しによって金銭的な負担を負う必要がありません。たとえ勤務先から引っ越し代の補助が出たとしても、家の間取りが変われば、サイズ的に置けない家具や新たに購入を検討する必要がある家具も出てくるでしょう。また、引っ越しに伴う負担は金銭的なものだけに限らず、各種手続きや荷造り・荷ほどきの負担も考慮する必要があります。
私自身、転勤族なこともあって、これまで3回ほど引っ越しをしていますが、いずれも数十万円単位の出費が伴いました。転勤族であることが確定している場合、転居を見越した上でしっかりとお金を貯めておく必要があるでしょう。
転勤のない仕事に転職するデメリット
転勤がない仕事につくことでさまざまなメリットがある一方、注意しなければならない点も存在します。
新しい環境での刺激が得られない
転勤がないということは、同じ環境に長くとどまり続けることになります。新しい土地や文化、人々との出会いがないため、新鮮な刺激を受けづらくなります。環境が変わらないことで、マンネリ化してしまう可能性もあります。
また、新しい発想や価値観に触れる機会が少なくなり、視野が狭くなりがちです。
仕事の視野が広がりにくい
転勤を伴う仕事であれば、異動を経験する中で様々な業務に携わる機会があるため、多くの知識や経験を積むことができます。一方、転勤がない仕事では限られた業務にとどまってしまう傾向が強く、経験値を広げづらいほか、スキルアップのチャンスが減ってしまう恐れがあります。転勤がある仕事と比較して新たな視点や成長の機会が得にくいことは、デメリットの1つといえるでしょう。
また、転勤のない仕事は各種手当てが得られないため、転勤ありの仕事に比べて給与が少なくなります。
新たな人脈が広がりづらい
新たな人脈が広がりづらいのも、転勤がないことによるデメリットのひとつです。転勤があれば、異動の度に新しい人間関係を構築できますが、転勤のない仕事では基本的に同じ人々と働き続けることになるでしょう。そのため、たとえ職場の人間関係でストレスを抱えていたとしても、なかなか解消されない恐れがあります。
また、社内の人事異動の幅も狭くなることから、キャリアアップが難しくなる可能性も考えられます。
将来設計に悩んだらライフプランを作成してみよう
転勤という避けられないライフイベントがある人にとって、ライフプランの作成は欠かせません。ここではライフプラン作成の重要性と、作成時の留意点について紹介します。
ライフプランの重要性
転勤の可能性がある仕事に就いている人にとって、ライフプランを立てることは特に重要です。いつ転勤になるかわからない状況下であっても、ライフプランを作成することで自分の将来の目標や夢を明確にできるほか、そこに向けて着実に歩みを進めていくことができます。
また、転勤等によるライフイベントにも柔軟に対応しやすくなるでしょう。
ライフイベントを考慮しよう
ライフプランを作成する際には、転勤による住居の移転、家族の別居、子供の教育環境の変化など、様々な事態を想定しておかなければなりません。転勤が決まった際の行動計画や、引越し費用などのコストの見積もりなども忘れずに入れ込むようにしましょう。特に、女性の場合は出産や育児といったライフイベントが重なる可能性が高く、慎重に計画を立てる必要があります。
状況に応じて夫婦で役割分担をしたり、育児サポートなどの手配をすることも視野に入れて計画を立てることが大切です。
定期的な見直しが欠かせない
ライフプランは一度作ったからといって、終わりではありません。定期的に見直し、転勤の実情に合わせて修正を重ねていく必要があります。また、転勤が決まった際は速やかにプランの見直しを行い、新しい環境に適応できるよう準備を整えるようにしましょう。
まとめ
本記事では転勤制度のメリット・デメリット、そして転勤がある人に向け、ライフプラン策定の重要性について紹介しました。転勤を伴う職業に就いている人はライフプランの策定が大切だとお伝えしましたが、基本的には専門家に相談して作成することをおすすめします。転勤がある人が正確なライフプランを作成することは非常に難しく、プロであれば転勤による家族への影響なども考慮した上で適切なアドバイスをくれるでしょう。
この機会にぜひ、頼れる専門家を見つけてみてはいかがでしょうか。