「NISAの口座変更を検討している」ということは、
- 新NISAを身近な銀行や証券会社で始めたものの、手数料の高さやツールの使い勝手など、何らかの不便・不満が出てきた
- 運用を続けるうちに「自分はもっと海外ETFを買いたい」「低コストのインデックス投資信託を充実させたい」などといった、自分らしい投資スタイルが見えてきたため、より豊富な商品ラインナップを求めるようになった
といった状況にあると思います。
上記のような理由から、現在の金融機関では物足りなく感じ、「NISA口座を他の金融機関へ乗り換えたい」と思うのは自然な流れですよね。
ただし、お金のプロメディアで、数々の金融に関する相談実績を受けてきた「ねくこ」の立場から言えば、長期でじっくり資産形成を考えるなら、できるだけ頻繁な変更は避けたいところ。
なぜなら、NISA口座変更には年単位のタイミングや条件があり、変更による手間や管理コストがかかるからです。
しかし同時に、新NISA制度がスタートした今は、投資商品の拡充やサービス改善が進む時期でもあります。
ここで一度、環境を見直し、必要であれば今の段階で変更しておくのは決して悪い選択肢ではありません。
「なるべく変更は避けたい」が「今こそチャンス」の両面を踏まえたうえで判断してください。
この記事では、NISA口座を別の金融機関に変更する際の具体的なメリット・デメリット、手続きの流れやベストなタイミング、そしておすすめの金融機関を紹介します。
長期運用を前提に、より理想的な投資環境を整えるヒントとして、ぜひ最後までご覧ください。
つみたてnisaだけじゃない? 金でもできる積立投資のメリットとデメリットとは|金貨買取本舗
金融機関の変更は可能:投資の選択肢を増やしたい人におすすめ
まず大前提として、NiSA口座の金融機関変更は可能です。
「NISA口座は一度決めたら変えられない」と思っている方も多いですが、実はNISA口座は年単位での変更が可能です。
この制度によって、サービスや商品の幅がより自分に合う金融機関へ移行することができますが、変更には条件や時期があり、誰でも好きなタイミングですぐに切り替えられるわけではない点に注意しましょう。
例えば、その年にNISA枠を使って買い付けを行った場合、その年内は変更できないなどのルールがあります。
以下の表を参考に、買い付け状況に応じて変更受付期間が異なることに注意してくださいね。
1月~9月 | 10月~12月 | |
---|---|---|
当年中に買付あり | 受付不可 | 翌年度分の受付期間 |
当年中に買付なし | 当年の受付期間(9月中旬頃まで) | 翌年度分の受付期間 |
つまり、当年中にNISAで商品を購入したら、その年分の変更は不可能と考えてください。
「なるべく変更は避けるべき」ではありますが、もし今の環境がどうしても合わない&他の金融機関に大きなメリットを感じるなら、今のうちに上記スケジュールをチェックしてみてください。
変更は年単位で可能
NISA口座は「一人1口座」が原則ですが、年に1回、金融機関の変更手続きが認められています。
上述のとおり、その受付期間は「変更したい年の前年10月1日から、変更したい年の9月30日まで」と定められています。
例えば、2025年度中に変更したい場合、2024年10月1日~2025年9月30日までが手続き期間となります。
この期間中に変更申請を行えば、2025年の非課税枠を新しい金融機関で使い始めることが可能です。
こうした年単位での変更チャンスは、投資を継続していく中で「今の金融機関では物足りない」と思った際に活用できます。
特に新NISAが始まって間もない今は、多くの金融機関がサービス向上に力を入れている時期です。
もし本当に合わない場合は、今、制度初期に変更して恩恵を受けることも戦略のひとつと言えるでしょう。
変更する年の買い付けはNG
注意点として、「変更を望む年にはNISAで買い付けしない」ことが挙げられます。
おさらいになりますが、もし、その年の1月1日以降にNISA枠で商品を購入してしまうと、その年中の変更は不可能です。
翌年10月まで待たなければなりません。
たとえば、2025年中に変更したいなら、2025年1月1日以降はNISA枠で買わないようにする必要があります。
もし、うっかり買い付けしてしまった場合、2025年の10月から翌年分(2026年分)の変更手続きしか受け付けてもらえません。
逆に、売却には制限はなく、売ってもOKです。
いずれにせよ、変更する年を狙うなら、その年初めから「新NISA口座で買わない」という事前準備が大切です。
こうした制約があるからこそ、最初にしっかりと金融機関選びをすることが理想ではあります。
金融機関を変更するメリット/デメリット
変更できる時期や成約がわかったところで、改めてNISAの口座変更をすることで起こりうるメリット・デメリットを正しく理解しましょう。
「できれば変更しない」けれど「どうしても必要な場合には今がチャンス」というスタンスで判断すると良いですよ。
ご自身が当てはまると思う方に寄り添って、行動することをおすすめします。
メリット:商品の幅が広がる
金融機関を変更することで得られる最大のメリットは、投資商品の選択肢が増えることです。
- 商品の幅が広がる:銀行のNISA口座では株式が買えないなど、金融機関によって取扱商品に差があります。より豊富な投資信託、海外ETF、個別株、債券など、多面的な運用が可能になれば、長期的なポートフォリオ構築に有利です。
- 手数料が安くなる:ネット証券などは購入時手数料が無料(ノーロード)の投資信託が多く、コスト面で有利。長期投資では手数料の差が最終的なリターンに大きく影響します。より低コストな金融機関へ乗り換えることで、複利効果をより強く享受できます。
- サポート体制が充実する:一部の金融機関は豊富な投資情報、分析ツール、セミナーや学習コンテンツを提供しています。初心者でも安心して始められるサポート環境があれば、投資に関する知識や経験をスムーズに積み重ねられます。
こうしたメリットは、「もっと自由に、安く、学びながら投資したい」という方に特に魅力的。
どうしても、商品や体制、使い勝手の面において今の金融機関に満足できないなら、新NISAが始まって日が浅い今こそ、行動のチャンスかもしれません。
デメリット:商品の持ち越しはできない
一方、口座変更によるデメリットも見逃せません。
- 商品の持ち越しはできない:旧口座で保有している商品を新しい口座へ移動することは不可能です。結果として、資産が複数の口座に分散することになります。
- 口座管理が煩雑になる:変更後は、旧口座には動かせない商品、新口座にはこれから買う商品というように分かれます。ログイン先や閲覧画面が増え、全体の資産状況を把握しにくくなる可能性も。
- 変更には時間がかかる:手続きには2週間~1か月程度必要です。その間、買い付けのタイミングを逃すこともありえます。
こうしたデメリットを踏まえると、やはり「なるべく変更しない」のが理想です。
しかし、今まさに新NISAで各社がサービスを磨いている時期なので、多少の手間やデメリットを許容しても乗り換えたいと感じるなら、長期的な視点からまさに今、検討する価値はあります。
旧口座は継続or売却?どっちがおすすめ?
そして、NISA口座の金融機関を変更後、旧口座での買い付けは不可能になります。
よって、旧金融機関で購入したNISAに関しては、保有資産を継続して持つか、ある程度で売却するか判断が求められます。
【大前提】旧口座で資産の継続保有は可能
金融機関変更後、旧口座では新規の買い付けはできなくなります。
しかし、すでに保有している商品は非課税保有期間が終わるまでそのまま維持可能。途中で売却することも自由です。
一方で、旧口座から新口座へ資産を直接移せないため、管理が複雑になるデメリットもあります。長期運用を前提とするNISAなら、なるべく同じ口座で資産を育て続けたほうが楽です。
よって、「それでも、今すぐ商品ラインナップを変えたい」「サービス改善を享受したい」「実は口座開設したけれど、(ほぼ)運用していなかった」という方は、この点にも留意して決断してください。
継続がおすすめ:長期保有で複利効果を狙う
もし旧口座に含み益がある商品や、将来性が期待できる銘柄を保有しているなら、そのまま継続保有でじっくり複利効果を狙うのも一手。
配当金や株主優待がある場合も、わざわざ売却せずキープしておくことで、長期的な恩恵を受けられます。
頻繁な売買よりも、時間を味方につけて成長を待つ戦略は、NISAの本来のコンセプトとも合致します。
「なるべく変更はしない」精神を活かし、旧口座の商品はそのまま温存し、新口座ではまた別の商品で長期戦に挑むという組み合わせも考えられます。
売却がおすすめ:目標額に達したとき
一方で、旧口座で目標金額に達した商品があるなら、売却して利益を確定し、資金を新口座へ再投下するのも合理的です。
達成した資産を一部安全資産にシフトしてリスクを軽減するなど、資産配分を見直すチャンスになります。
また、ライフイベント(留学、結婚、住宅購入など)が控えているなら、一部を現金化しておくのも選択肢のひとつ。
新NISA口座で新たな目標を掲げて、またコツコツと積み立てを開始することで、長期的な資産形成を途切れさせずに続けられます。
NISAの運用益が上手く出ない!そんなときどうする?
という人の他にも、
今の金融機関でやっているNISAが思ったように運用益が出ないから、口座を変更して他の商品を検討している
という方もいらっしゃると思います。
そんな方は、今の口座で上手くいっていない商品の処遇を考えなくてはなりません。
相場の変動で一喜一憂する気持ちは分かります。しかし、むやみに判断すると、長期のリターン獲得チャンスを自ら手放してしまう恐れがあります。
本当に見込みがないなら手放した方が良いですが、そうでない場合は選択肢をよくよく検討した上で判断してくださいね。
対策1.持ち続ける
まずは保有したまま、好転するのを待つことが考えられます。
例えば、「成長投資枠」で一括買いして含み損が出ている場合、特段の悪材料がなければ、そのまま塩漬けして待つのも方法です。
時間とともに市況が回復すれば、損失が解消する可能性があります。長期投資は、焦らず待つことも重要です。
対策2.買い増しする
値下がり中の商品をあえて買い増すことも、有用な選択肢です。
この場合、値下がり時の購入なので平均取得価格が下がり、将来値上がりした際に利益を拡大できます。
短期的な含み損にとらわれず、中長期的な視点で見ることが大切。
下がっている時期こそ、安く仕込むチャンスにもなり得ます。
対策3.損切りする
投資対象の明らかな悪化や政治リスクなど、回復が見込めない場合には損切りも検討すべきです。
「なるべく変更はしない」NISA口座でも、どうしても合わない商品や見通しが暗い商品は潔く切り替え、より有望な銘柄やファンドに資金を回しましょう。
損切りとは?
「損切り」は、含み損を抱えた商品を売却して損失を確定させる行為。
しかし、新NISAでつみたて投資をしている場合、株価暴落を理由に損切りするのは得策とは言えません。
なぜなら積立投資はドル・コスト平均法を活かし、相場変動に左右されず淡々と買い付けることで長期成長を狙う戦略です。
変更におすすめの金融機関は?
ここまでお読みいただき、「やっぱり口座を変えよう!」と思った方は、ぜひ以下の記事でおすすめの金融機関を確認してみてください。
新NISA開始直後の今は、各社が手数料削減やポイントサービス拡充など、投資家に有利な取り組みを強化している段階。
ここまで読んで「やっぱり乗り換えたい!」と思ったなら、上記リンク先の記事で、あなたに合う金融機関をチェックしてみましょう。
終わりに|自分が使いやすい金融機関で長期運用を目指そう
今回は以上です。
NISA口座は年1回変更可能ですが、変更には時間や手間がかかり、資産が分散するなどデメリットもあります。
長期の資産形成を考えるなら、最初から自分に合う金融機関を選び、コツコツと同じ環境で積み立て続けるほうが運用効率は上がるということは、念頭に置いていただけると嬉しいです。
ただし、新NISAはまだ始まって間もない制度。今後、金融機関同士の競争が激化し、より魅力的な商品ラインナップやサービスが提供される可能性があります。
現時点で「今よりもっと自分に合った環境がありそう」だと感じるなら、新NISAが始まって日が浅い今だからこそ、早めに行動することで、長期的な資産形成のスタート地点を有利な場所へと移すことができます。
要は、「できれば変更しない」方が理想。でも「もし今、どうしても違う金融機関が良さそうなら、新NISA初期の段階で手を打つ」という柔軟な姿勢を持つことが大切です。
変更するにせよ、その後は腰を据えて長期的な視点で資産を育てていきましょう。複利のパワーを活かし、時間を味方につけることで、小さな芽が大きな果実へと育っていくはずです。