東京都心に住んでいるなど、地価が上がり続けている地域においては、賃貸に住み続けるよりも持家を購入してのローン返済をする方が割安となるケースが多い昨今。
単に賃貸よりもグレードの高い部屋に住めるだけでなく、団体信用生命保険によるリスクヘッジや、住宅ローン控除による減税といったメリットも大きいため、意を決して検討されている方も多いと思います。
とはいえ、住宅ローン審査に不安を持つ人は少なくありません。
住宅ローン審査に落ちてしまうと、マイホームの購入スケジュールが狂ってしまいますし、購入自体が難しくなってしまう可能性もあるからです。
実際に、どのような場合に住宅ローン審査に落ちてしまうのでしょうか。
本記事では住宅ローン審査に落ちる主な理由と、審査を通しやすくするコツをご紹介します。
事前に住宅ローン審査について知ることで審査に落ちるリスクを減らし、安定したマイホーム購入へとつなげていきましょう。
住宅ローン審査に落ちる主な理由6選
金融機関ごとに差があるとはいえ、住宅ローンの返済能力を見られるのは共通です。
そのため、審査項目は概ね同様です。そこで、住宅ローン審査に落ちてしまう代表的な理由を紹介します。
完済時の年齢が高い
通常の金融機関は、申込時年齢と完済時年齢の条件を設定しています。
金融機関によって年齢は異なりますが、一般的に申込年齢は「18歳以上70歳以下」、完済時年齢は「80歳未満」といった条件が多いです。
住宅ローンを申し込むのがいわゆる現役世代であるなら、申込年齢はほぼ問題ないでしょう。
しかし住宅ローンの返済期間は長いため、完済時年齢には注意が必要です。
仮に完済年齢の条件が「80歳未満」であった場合に「(完済年齢が)79歳だから問題ない」とは限りません。
申込者が会社員で定年年齢が65歳であれば、定年退職後も返済が10年以上続くことになります。
つまり、条件を満たしていても、完済年齢が高いとそれだけで審査は厳しくなるといえます。
収入に比べて借入額が大きい
収入と借入額の関係は深いです。
一般的に住宅ローンでは、年収の5倍程度までが借入可能額の目安だとされてます。
例えば年収500万円であれば2,500万円、年収700万円であれば3,500万円が借入額可能額の目安です。
また、年収に占める返済の割合(返済比率)も審査されます。
返済率は30%~35%以下で設定されていることが多いです。
年収700万円の人で年間返済率を30%以下に抑えるのであれば、年間の返済額が250万円以下にしなければならない計算です。返済比率は、金利分も考慮したうえで返済額を算出しなければなりません。
なお、返済比率は、以下の計算式で算出できます。
返済比率(%)= 年間のすべてのローン返済額 ÷ 年収 × 100
他のローンなどの借入が多い
マイカーローンや家電ローンなど、他のローンを組んでいる(借入がある)方も注意が必要です。
というのも、上述の「返済比率」を求める際の年間返済額には、他のローンの借入額も含めて算出されるからです。
他のローンがあっても住宅ローン審査に通過することは可能ですが、そのためには「返済比率」の条件を超えないようにしなければなりません。
なお、カードローンやキャッシングはローンという認識はないかもしれませんが、審査上は「借入額」に含まれます。
ブラックリストに載っている
ブラックリストに載ることを「信用情報にキズがつく」とも言います。
信用情報とはクレジットやローンの契約に関する情報のことで、延滞した場合はその情報も掲載されます。
金融機関やクレジット会社はこの信用情報を照会できます。つまり、ローン申込者や顧客信用度を判断するための材料として利用されるのです。
信用情報にキズがつくと、返済への信用度が落ちてしまうため、住宅ローン審査に通ることが難しいでしょう。
なお、延滞情報は一生残るわけではありません。信用情報の種類ごとに期間が定められており、期間経過後は抹消されます。
延滞情報の場合、抹消までの期間は概ね契約終了後(支払い完了後)から5年以内が目安です。ただし自己破産の場合、抹消までの目安は5~10年です。
雇用形態が不安定
住宅ローンは何年もかけて返済するのが普通です。
そのため、年収額とともに雇用が安定しているかどうかも重要視されます。原則として派遣社員や契約社員は働く期間が決まっている有期雇用です。
一方で正社員は無期雇用契約を結び、会社を辞めた場合でも、退職金が期待できます。
これらのことから、安定した雇用(長期的な雇用)が見込める正社員のほうが住宅ローン審査においては有利です。
金融機関によっては派遣社員や契約社員は、そもそも申し込みの対象外となることもあります。
また、会社経営者や役員は会社の経営状況に応じて収入が大きく変動したり、規模や事業によっては倒産のリスクも低くありません。
そのため、仮に申し込み時点での年収が高かったとしても、事業内容や経営状態を厳しく審査される可能性があります。
健康面での不安がある
意外かもしれませんが、住宅ローン審査において健康は非常に重要な要素です。
というのも、多くの金融機関において住宅ローン借入時に「団体信用生命保険(団信)」の加入を義務付けているからです。
団信とは住宅ローン契約者に万が一のことがあったときに住宅ローンの残金を保険金として支払う生命保険であり、加入には健康要件があります。
例えば、過去3年以内の手術や治療の有無、もしくは障害の有無などが該当します。
審査に落ちてすぐの再申し込みはNG
もしも住宅ローンの審査に落ちたら、多くの人は焦ってしまうことでしょう。「早く借入先を見つけなくては」と考え、すぐに再申し込みしに動いてしまうかもしれません。
しかし、次回の申し込みまでには半年間程度空けることをおすすめします。
実は、金融機関に住宅ローンを申し込んだ時点で、上述した信用情報に住宅ローンの申し込みをした旨の情報が登録されます。
そしてこの情報は6ヶ月間登録されることとなっています。
登録が残った状態で他の金融機関に申し込むと、後に申し込んだ金融機関が信用情報を確認した際に、最近他の金融機関に住宅ローンを申し込んだことが知られてしまいます。
他の金融機関で審査に落ちたことが推測できるため、後の金融機関において心証が悪くなることや、審査が厳しくなる懸念が生じるのです。
審査通過率を上げるコツ
住宅ローン審査の詳細は公開されませんが、審査される項目はある程度予測できているため、ご自身の住宅ローンの弱点を知り対策を練ることが可能です。
4つの対策を紹介します。
- 返済額や返済期間を見直し
- 頭金を増やす
- 収入合算やペアローンを活用する
- 申込先を変える
返済額や返済期間を見直し
返済額を抑制することで「返済負担率」を下げることが可能です。
購入する住宅について不要な設備やオプションがついていないか見直し、住宅価格の圧縮を検討します。
また、定年までの完済を目指して返済期間を短くしている方は、借入額と比べて年間の返済負担率が高くなっている懸念があります。
対策として、定年後も返済を続けることを検討してみましょう。返済が長引くのは不安かもしれませんが、返済の途中で繰上返済をする選択肢もあります。
頭金を増やす
頭金を増やすことでも、借入額の圧縮ができます。余裕資金があれば支出を検討しましょう。
預貯金を減らしたくない気持ちが大きいかもしれませんが、預貯金は住宅ローンにおいては効果的に活用すべきです。
ただし、マイカー購入費用や子供の受験費用といった今後数年以内に見込まれる支出と、何かあった場合に備えた3カ月~半年程度の生活費(生活防衛費)は確保しておきましょう。
その他、住宅購入にかかる住宅ローン手数料や引っ越し費用の資金の確保も忘れずに用意しておいてください。
収入合算やペアローンを活用する
一定の収入がある親族がいるのであれば、収入合算やペアローンも有効かもしれません。
例えば夫が単独で住宅ローン契約をする際に、妻も働いているケースが該当します。
審査において夫の収入に妻の収入を所定の割合で上乗せできるのが「収入合算」です。
「ペアローン」は、夫婦がそれぞれ住宅ローン契約者となるもので、それぞれの限度額で借入できる分、審査における借入限度を引き上げることが可能です。
ただし、収入合算やペアローンを利用できるかどうかは金融機関ごとに異なります。
事前に要件を確認しましょう。また、収入合算やペアローンについて、下記記事にて詳しく紹介しています。
申込先を変える
住宅ローン審査の基準は金融機関によって変わります。
第一希望の金融機関において審査が通らなかった場合でも、他の金融機関では通るかもしれません。
また、公的な機関である住宅金融支援機構が各金融機関と提携して提供するフラット35(※)も、比較的審査が通りやすいローンだと言われています。フラット35を検討するのも一つの手でしょう。
※フラット35:全期間固定金利型住宅ローンで、市場金利の変動に関わらず返済金額が一定となる。申し込みは各金融間で行う。
終わりに|審査に落ちたらまずは理由を分析しよう
住宅ローンの審査に落ちてしまったときは、慌てず理由を分析することが重要です。
落ちてすぐの再申し込みは信用情報に履歴が残っている状態での申し込みになってしまいますし、同じ条件で再申し込みをしても、また落ちてしまう可能性が高いからです。
理由を分析して、状況を改善させたうえで、再申し込みすることは住宅ローン審査に通る可能性を高めます。
住宅ローン審査の知識をつけることで、安心してマイホーム計画を進めていけるようにしましょう。