住宅ローン控除はいつまで利用可能?2022年からの変更点や最新の計算方法を解説

※当サイトのリンクの中には広告が含まれます。

住宅ローンを利用して住宅購入するなら、ぜひとも利用したいのが住宅ローン控除です。

住宅ローン控除は、多くの方が、「お得な制度」として名前を聞いたことがあるでしょう。

一方、住宅ローン控除は定期的な見直しがなされている制度です。そのため、仕組みがよくわからなかったり、条件を満たしているか不安に思う方も少なくないでしょう。

本記事では、新築住宅を購入する方向けに、住宅ローン控除の概要や計算方法、申請手続き等について解説します。

目次

住宅ローン控除とは

住宅ローン控除とは、そもそもどういった制度なのでしょう。制度の趣旨と概要を簡単に解説します。

「住宅ローン控除」制度の趣旨

住宅ローン控除は、正式には「住宅借入金等特別控除」といいます。

制度の趣旨は、住宅ローンを利用してマイホームを購入(増改築含む)する世帯の金利負担の軽減です。

住宅ローンは借入額が大きく、返済期間も長いので金利負担も重くなりがちです。

そういった方の金利負担を軽減できる制度が住宅ローン控除で、借入金額に応じて所得税の還付を受けられます。

「住宅ローン控除」は概算でいくら還付される?

住宅ローン控除制度は、国が主体で行っています。そのため、どんな住宅でもよいわけではなく、一定の条件が設けられています。

条件を満たした住宅は、次の控除が受けられます。

「年末の住宅ローン残高✕控除率(0.7%)」

例えば、年末の住宅ローン残高が3000万円であれば、21万円の控除が受けられる計算です。

ただし、借入には限度額があります。また、ご自身が納めている所得税以上の還付は受けられません。

※住宅ローン控除は所得税の還付を受けられる制度です。給付金ではないことを理解しておきましょう。

近年の住宅ローン控除改正における動き

住宅ローン控除は令和4年度(2022年度)に大きく改正されました。

改正内容を確認しつつ、2024年の状況についても触れていきます。

令和4年度(2022年度)の大きな改正点

大きな改正点は「控除率」「限度額」「対象住宅」の3点です。

控除率

令和4年度の税制改革以前は、控除率は「1%」でした。

しかし、住宅ローンの適用金利が1%を超えることが多かったため、実際に負担している金利以上の住宅ローン控除が受けられる状況が、一部で発生していました。

そのため、令和4年度以降は控除率が引き下げられ「0.7%」となっています。ただし、一方で、控除年数が10年から13年に延長されました。

借入限度額

住宅の種類ごとに住宅ローン控除の対象となる借入限度額が区分されるようになりました。

また、一時的な措置ではありますが、子育て世帯・若年夫婦世帯が2024年中に入居する場合は、借入限度額が上乗せ「最大5,000万円」になります。

対象住宅

住宅ローン控除を適用できる、住宅の要件がより厳格になりました。

一言でいうと、一定の省エネ基準を満たした住宅であることが重視されるようになりました。

省エネ基準を満たさない住宅は「一般の新築住宅(その他の新築住宅)」のように呼ばれ、段階的に控除が受けられなくなるようになりました(※1)。

令和4年以降における、住宅ローン控除の概要を表に示します。

スクロールできます
入居年2022年(令和4年)~2023年(令和5年)2024年(令和6年)~2025年(令和7年)
控除限度額
(省エネ住宅基準を満たした住宅)
4,000万円~5,000万円3,000万円~5,000万円
控除限度額(一般の新築住宅)3,000万円0万円(2,000万円)※2
控除率全期間0.7%
控除年数13年間13年間(一般住宅は10年間※2)

※1:2023年中に建築確認を受けている、もしくは2024年6月30日までに建築されたものは対象
※2:対象となる一般の新築住宅は、借入限度額を2,000万円として10年間の控除が受けられる
参考:国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)

令和4年度(2022年度)の大きな改正点

住宅ローンが適用される「省エネ住宅基準を満たした住宅」の種類には、次のようなものがあります。

  • 認定長期優良住宅
  • 低炭素住宅
  • 低炭素建築物とみなされる特定建築物
  • 特定エネルギー消費性能向上住宅
  • エネルギー消費性能向上住宅

上記は、種類に応じた適用要件があります。

対象の住宅には「自家発電・蓄電装置」「断熱性能」「節水機能」など、多様な特徴があります。

住宅選びの前に特徴を知り、ご自身がこだわりたい点を明確にしておくと、よりよい住宅選びにつながります。

なお、ここでは触れませんが、住宅ローン控除を受けるためには居住要件や住宅の床面積要件、適用者の年収要件等があります。詳細はこちらに記載されているため、必ず確認しておきましょう。

床面積の緩和措置

本来、住宅ローン控除の適用を受けるためには「床面積50平方メートル以上」であることが必要です。

しかし、令和4年改正によって「床面積40平方メートル以上」に緩和されました。

ただし2024年5月時点では、2024年12月31日までに建築確認を受けた住宅までが対象とされています。

2025年度以降も緩和措置が継続するかは不透明ですが、ライフスタイルや予算の関係でコンパクトな住宅が欲しいと考えている方にとっては重要な論点です。

なお、緩和措置で住宅ローン控除の適用を受ける場合は、購入者の合計所得金額が1,000万円以下であることも要件です。

マイナス金利解除との関係

2024年3月に、日銀の「マイナス金利」が解除されました。

マイナス金利は私たちの預金に直接適用されるものではありませんでしたが、日本の金融全体において金利を押し下げる重石の役割がありました。

重石がなくなったため、さまざま場面で金利が上昇しています。住宅ローン金利も例外ではありません。

住宅ローン金利が上がれば金利負担が大きくなるため、住宅ローン控除の重要性も高まります。対象住宅の変化や、緩和措置の動向を注視しましょう。

※住宅ローン控除はこれまでも定期的に改正されてきました。日頃からアンテナを張っておき、情報をアップデートすることをおすすめします。

住宅ローン控除の計算方法

住宅ローン控除額の計算方法は、決して難しくありません。

ただし、いくつかの注意点があります。

住宅ローン控除額の計算方法

住宅ローン控除額の計算式は「年末の住宅ローン残高×0.7%」です。

しかし、これ以外にも控除額が決まる要素が複数あります。

  • 借入限度額がある
  • 還付制度であるため、自身が納めた所得税以上の控除は受けられない

会社員の方で、ご自身の所得税が分からない場合は、源泉徴収票を確認することをおすすめします。

所得額は給与所得控除、社会保険料控除、扶養控除などさまざまな控除が引かれたあとの金額に、金額ごとに設定された税額を掛けて算出します。

源泉徴収票には、控除額についても記載されています。そのなかで「源泉徴収額」の欄にある数字が、1年間に徴収された所得税の合計額です。

住宅ローン控除の計算例

住宅ローン控除額を、2つのケースでみていきましょう。

計算上、初回の住宅ローン残高は、一回目の支払い後の金額としています。また、本文で触れている以外の要件については考慮していません。

【共通条件】
金利タイプ:全期間固定金利
適用金利:2%
返済期間:35年
住宅金融支援機構の住宅ローンシミュレーションを使用

例1 片働き世帯 借入額3,000万円の場合世帯 借入額3,000万円の場合

年収500万円の世帯主が単独で住宅ローン控除の適用を受けるケースです。

【1年目の控除額】
住宅ローン残高 約2995万円
2995万×0.7%=約20.9万

【10年目の控除額】
住宅ローン残高 約2344万円
2344万×0.7%=約16.4万円

スクロールできます
1年目10年目
住宅ローン残高約2,995万円約2,344万円
控除額2,995万×0.7%=約21万円2,344万×0.7%=約16万円

※住宅ローン残価は万円以下切り捨て

10年経過後でも、15万円以上の控除が受けられる計算です。

ただし、年収500万円程度ですと所得税額は13万円前後が平均的です。そのため、この例では、10年間ずっと引き切れない額が残ってしまうことになります。

例2 共働き世帯 借入額 各2,000万円(世帯合計4,000万円)の場合

それぞれ年収500万円の夫婦がペアローンを活用して住宅ローン控除の適用を受けるケースです。

ペアローンとは、夫婦それぞれが住宅ローンを組む方法です。事務手数料は2本分になりますが、住宅ローン控除も個別に適用されます。

【1年目の控除額】
住宅ローン残高 約1996万円
1996万×0.7%=約13.9万円×2人分

【10年目の控除額】
住宅ローン残高 約1563万円
1563万×0.7%=約10.9万円×2人分

スクロールできます
1年目10年目
住宅ローン残高約1,996万円約1,563万円
控除額1,996万×0.7%=約14万円×2人分2,344万×0.7%=約11万円×2人分

平均的な所得税を支払っている場合、1年目は夫婦それぞれがほぼ所得税の全額に近い還付を受けられそうです。

10年目は還付額は減り、所得税額に満たない可能性がありますが、それでも2人分で20万円以上の控除が受けられます。

※住宅ローン控除はご自身の所得税額や住宅ローンの組み方で恩恵が変わることに注意しましょう。

住宅ローン控除の手続き

住宅ローン控除の適用を受けるには、ご自身で必要書類を集めて手続きしなければなりません。

住宅ローン控除の手続き

初年度は確定申告書が必要です。

確定申告とは、税務署に対して所得の内容と所得税額を明らかにする制度です。会社員の方は、勤務先で所得税額計算・納税まで行ってくれるため、なじみがない制度かもしれません。

ただし、会社員の方であれば、初年度以降は年末調整で住宅ローン控除の適用を受けることが可能です。

住宅ローン控除の必要書類

住宅ローン控除の手続きにおいて、代表的な必要書類は次のとおりです。

①住宅借入金等特別控除額の計算明細書
税務署に取りに行くか、国税庁のウェブサイトからダウンロードします。

②住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
年末が近づくと金融機関から送られてきますが、もしも届かない場合は問い合わせましょう。

③家屋の「登記事項証明書」
床面積が50平方メートル以上(緩和措置を受ける場合は40平方メートル以上50平方メートル未満)であることを明らかにする書類です。

④「工事請負契約書」または家屋の「売買契約書」の写しなど
住宅の取得対価の金額を明らかにする書類です。

⑤補助金決定通知書等
国または地方公共団体等から補助金等の交付を受けた場合に、その事実を明らかにする書類です。

⑥住宅等の区分に応じた書類
所定の省エネ住宅基準を満たした住宅である場合は、それを明らかにする書類が必要です。

参考 国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)

住宅ローン控除を知ってうまく活用しよう

住宅ローン控除は改正が多いだけでなく要件も複雑です。そのため、「難しそう」「調べるのは面倒」と感じる方もいることでしょう。

しかし、住宅ローン控除は、金利負担を軽減してくれる心強い存在です。

しっかりと理解し、受けられる恩恵は享受していきましょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

お金に関する基本的な知識から貯金のコツ、資産形成まで幅広く伝えるメディア「@nextマガジン」の運営を行っています。ここにくれば、お金の悩みが解決できる「お金の広辞苑」を目指して日々記事を公開中です。本当にタメになる情報だけを厳選してお届けします。

目次