【2025年7月10日】の経済・時事ニュースまとめ

7月10日朝の東京市場は、米国株高の余韻とトランプ米大統領の追加関税発表という強弱材料が交錯し、主要指標と為替が方向感を探る展開となりました。
国内では日銀が企業物価指数(CGPI)を公表し、物価上昇の減速が確認されました。企業では日産自動車が大型転換社債を発行し、フジ・メディアHDは旧村上系ファンドによる買い増しに対抗策を決定。
海外ではNVIDIAの時価総額4兆ドル突破、英仏首脳の移民対策協議、OpenAIの新ブラウザー計画など、注目すべき動きが相次いでいます。

今回はこれらのトピックを、数字と背景を丁寧に補足しながらお届けします。
主要株価指数・為替レート(07月10日 午前10時時点)
項目 | 値 | 前日比 |
---|---|---|
日経平均株価 | 39,586.46円 | −234.82 (0.59%)円 |
NYダウ | 44,458.30ドル | +217.54 (0.49%)ドル |
S&P500 | 6,263.26ポイント | +37.74 (0.61%)ポイント |
ドル/円 | 145.79円 | -0.54円 |
日経平均の動きと背景
日経平均、開始時の寄り付きは前日比25円安でしたが、10時時点では関税リスクによる輸出株への売りが先行し下げ幅が拡大しました。
円高が同時進行したことで、指数寄与度の高いハイテク銘柄が重しとなりました。
米国株:ハイテク主導の続伸
9日の米国市場ではNVIDIAが一時時価総額4兆ドルを突破し、S&P500とNYダウも連れ高となりました。
利下げ観測とFRB議事要旨が「年内に緩和もあり得る」と示したことも買い安心感につながっています。
ドル/円:円買いが優勢
トランプ米大統領が銅に50%の関税を課すと発表した直後、安全資産として円が買われ、ドル/円は145円台後半へ下落(円高方向に推移)しました。
短期的にはリスクオフによる円高と、日銀利上げ観測の後退が拮抗する構図です。
資産運用をしている人がこの局面で心掛けるべきこと
短期の相場変動に備える流動性
日銀が追加利上げを2026年3月以降に先送りするとの観測が強まり、円キャリートレード再拡大の思惑から為替の変動性が高まる可能性があります。
資産運用を行う際は、急激な円高・円安のいずれにも対応できるよう、生活費6か月分の現金クッションを確保することが基本です。
これにより、相場急落時に資産を不本意に売却せずに済み、長期プランを保ちながら市場の調整を乗り切りやすくなります。
長期分散の再点検(NISA・iDeCo)
企業物価指数が伸び悩み、物価上昇圧力のピークアウトが示唆されたことで、投資家のインフレ期待はやや後退しています。
とはいえ生成AI関連銘柄の高成長が世界株高を牽引している現状では、期待リターンの高い資産と守りの資産を組み合わせる「長期・分散・積立」の原則が依然として有効です。
NISAやiDeCoで積立投資を継続している場合でも、銘柄や地域の偏りが大きくないかを定期的に点検し、必要に応じて追加投資ではなく配分調整でリスクを抑える選択肢を検討してください。


為替リスクへの向き合い方
ドル/円相場は145円台後半で推移しており、米国の追加関税が材料視されると円高に振れやすい地合いです。
外貨建てETFや米国個別株を保有している場合は、為替ヘッジの有無がポートフォリオ全体の変動率に大きく影響します。
長期的に外貨資産で成長を取り込みたい場合には「ヘッジなし」でリスク許容度を高める一方、生活防衛資金や学資目的の運用では「部分ヘッジ」や円貨資産の積み増しで為替ショックを緩和するといった使い分けが効果的です。

金利・インフレに応じた資産配分
米FRBは年内利下げの可能性を示唆しつつも、物価動向次第で柔軟に対応する姿勢です。
もし米国金利が予想より下がらなければ、長期債券価格は伸び悩み、株式との逆相関が弱まる可能性があります。
国内では利上げ先送り観測で住宅ローン固定金利の上昇圧力が抑えられる一方、円キャリー復活で円安リスクが残ります。
株・債券・REIT・金など複数資産に分散し、各アセットの期待リターンとリスクを定期的に再評価することで、相場の「想定外」に備えることができます。

情報の取り入れ方と心理面
生成AI関連銘柄の急騰など「好材料が飽和しているテーマ」ではニュースの度に売買を繰り返すと逆効果になりがちです。
値動きが大きい局面ほど、確定拠出年金や積立NISAといった自動積立枠を軸にして“タイミング売買の比率を下げる”ことで、決断疲れを回避できます。
また、SNSや速報系メディアは情報速度が速い反面、真贋が見分けにくいため、一次ソースや企業のIR資料、中央銀行の会見など信頼性の高い情報を確認する習慣が重要です。
国内ニュース
日銀、追加利上げは2026年3月以降に先送りか
元日銀審議委員の櫻井眞氏はロイターの取材に対し、トランプ米政権の新関税で輸出採算が悪化する恐れがあるとして、日銀は「少なくとも2026年3月まで利上げを見送る」との見解を示しました。
7月末の展望レポートでは成長率と物価見通しの下方修正が濃厚です。
金利据え置きが長期化すれば、住宅ローン固定金利の上昇圧力が弱まり、家計の負担は当面限定的となる一方、円キャリートレードの再拡大で為替の変動性が高まるリスクも指摘されています。

企業物価の伸びが3%割れ、仕入れインフレは鈍化
日銀が発表した6月企業物価指数(CGPI)は前年比+2.9%、前月比-0.2%と3か月連続で鈍化しました。
エネルギー価格下落が主因で、企業のコスト負担はピークアウトの兆し。
ただし円安が進むと再びコスト高が懸念されるため、秋口の為替動向が注目されます。
国産EVラッシュ、2025年度に6車種発売へ
日刊自動車新聞は、ホンダ・スズキ・トヨタ・ダイハツ・日産のEV計6車種が2025年度内に国内投入されると報じました。
政府の充電インフラ補助や電池価格の低下が後押しし、トヨタはbZ4Xの値下げ、日産は次期リーフ全面改良で競争力を高める方針です。
2022年度の“EV元年”を超える発売ラッシュにより、ユーザーは車両価格と航続距離の両面で選択肢が増えます。
一方、電力需給ひっ迫時の急速充電制限などインフラ課題が残るため、自治体との連携が鍵となります。
日産自動車が転換社債を2,000億円へ増額、EV開発を加速
日産は利率1.0%・転換価額397.2円の海外円建て転換社債を発行し、調達資金を電動化と車載ソフト開発に充当します。
株価希薄化リスクよりも成長投資を優先した姿勢が鮮明です。
フジ・メディアHD、買い付け防衛策を決議
旧村上ファンド系が株式を買い増したことを受け、フジ・メディアHDは「大規模買い付け行為への対応方針」を導入。
放送免許を持つ上場企業として経営の独立性確保を狙います。
パナソニックHD、1185億円規模のプロジェクター事業売却が破談
パナソニックHDとオリックスが進めていた業務用プロジェクター事業の売却交渉が条件不一致で解消されました。
譲渡価格は1185億円とされ、4月設立予定だった新会社は白紙に戻ります。
同社はポートフォリオ再編を加速中で、代替案として他社への分割売却や事業縮小が浮上しています。
短期的には今期利益計画への下振れ懸念が高まる一方、コア事業への投資集中で中期的なROE改善を図る可能性があります。
海外ニュース
トランプ大統領、フィリピンなど7カ国に最大30%関税を通告
米政権はフィリピン20%、アルジェリア・イラク・リビア・スリランカ30%など、段階的な追加関税を通知しました。
対象国の産業界は対抗措置を検討中で、サプライチェーン再編が加速する可能性があります。
NVIDIAが4兆ドル企業へ、AIブームが世界株高を牽引
生成AI需要が継続し、同社株は1.8%上昇。
S&P500構成銘柄の時価総額シェアは8%に迫り、指数全体を押し上げる構造が続いています。
英仏首脳が移民抑止策で一致、国賓級会談へ道筋
スターマー英首相とマクロン仏大統領は小型船による不法入国阻止で協力を強化すると声明。
ポストBrexitのEU首脳訪英は初めてで、欧州の移民政策に新たな枠組みが形成されるか注目されます。
OpenAI、独自ウェブブラウザーを数週間以内に発表か
関係者によると、OpenAIはチャットGPTと連動し予約や情報入力を自動化できる新ブラウザーを準備。
Google Chromeの牙城を揺るがす可能性があり、大手ITの競争が再加熱しそうです。
テスラ株主27団体が年次総会開催を要請、ガバナンス懸念強まる
米テスラの年次株主総会が法定期限を越えて未開催であるとして、州財務局や年金基金など27の大口投資家が取締役会に開催日設定を求める書簡を送りました。
株価は年初来27%安と低迷し、イーロン・マスクCEOの政治活動への関与も問題視されています。
テスラは7月23日に四半期決算を予定しており、株主総会の行方と合わせてコーポレートガバナンスへの市場の目が一段と厳しくなります。
総会延期が続けば、テキサス州法に基づく株主側の提訴リスクも高まり、ボラティリティが増す公算です。
私たちの生活に起こること
仕入れインフレの鈍化は、秋以降の値上げラッシュが落ち着く期待につながります。
一方、米国の高関税は輸入品価格を押し上げるため、家電や食料などドル建て原材料を多用する商品の値動きには注意が必要です。
為替が円高に振れた場合、海外旅行や輸入食材は割安になりますが、輸出関連株の変動が増す点も押さえておきましょう。
家計防衛策としては、
- 生活必需品の「まとめ買い」は過剰在庫を避ける
- 電気代や通信費はプラン見直しで固定費を削減
- ポイント還元やキャッシュレス決済を活用し実質負担を軽減することが有効です。



投資面では、CGPI減速で国内景気が腰折れするリスクが意識される一方、米国AI関連の成長は続く可能性があります。
長期分散を基本としつつ、急な円高・円安に備えて外貨建て資産と国内資産のバランスを点検しましょう。