生命保険の相続税対策|非課税枠の活かし方と、やってはいけない6つの勘違い

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この記事で分かること

  • 非課税枠の未使用額と、現預金・死亡保険金の相続税額の違い
  • 配偶者・子の受取人比較と、二次相続まで見る理由
  • 契約形態、必要な死亡保険金額、避けたい6つの勘違い

親や配偶者の財産を整理すると、「預貯金の一部を生命保険へ移せば、相続税を抑えられるのではないか」と考えることがあります。

死亡保険金には、相続人が受け取る場合に500万円×法定相続人の数までを相続税の課税価格に含めない仕組みがあります。

相続税がかかる見込みがあり、非課税枠が残っている家庭では、生命保険を使う方法が候補になります。

ただし、非課税枠の金額がそのまま節税額になるわけではありません。

受取人、実際の保険料負担者、既契約、配偶者の税額軽減、二次相続まで含めると、同じ死亡保険金でも税負担は変わります。

最初に確認するのは商品名や予定利率ではなく、財産総額、法定相続人、既契約の死亡保険金、納税に使える現金です。

生活費・医療費・介護費に必要な現金まで保険料に回さず、家族全体の資金計画から必要額を決めましょう。

ねくこ

生命保険を増やす前に、相続税がかかるか、非課税枠が残っているか、現金が不足するかを順番に確認しましょう。

※本稿は個人契約の生命保険と相続税に関する一般的な情報です。最終的な税額や受取人の設計は、財産・債務・家族関係・契約履歴で変わります。

この記事の結論

  • 相続税がかかる見込みがあり、死亡保険金の非課税枠が残り、納税や財産配分に使う現金が不足する家庭には、生命保険が候補になります。
  • 非課税枠は500万円×法定相続人の数ですが、非課税額がそのまま節税額になるわけではありません。既契約、実際の保険料負担者、受取人、二次相続まで同じ条件で比べましょう。
  • 生活・医療・介護資金を先に確保し、財産・債務と既契約を整理したうえで、不足額が残る場合だけ保険料・保障期間・解約条件を比較しましょう。
目次

生命保険でできる3つの相続対策

生命保険には、相続税の課税価格を抑えることに加え、納税資金を準備し、特定の受取人へ現金を残す役割があります。

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役割生命保険でできること成立する主な条件
課税価格を抑える相続人が受け取る死亡保険金の一定額を、相続税の課税価格に含めない被相続人が保険料を負担し、相続人が死亡保険金を受け取る
納税・生活に使う現金を確保する不動産中心の遺産でも、受取人へ現金を残せる保険金請求ができ、受取人が納税や生活に使える
財産配分を調整する指定した受取人へ死亡保険金を残す受取人と保険金額を、ほかの財産配分と合わせて決める
ねくこ

非課税枠を使い切っていても、納税資金や当面の生活資金が不足する家庭では、生命保険を検討する理由が残ります。
反対に、相続税がかからず、十分な現預金もあるなら、節税だけを目的に保険を増やす優先度は低くなります。

死亡保険金の非課税枠は既契約を含めて計算する

死亡保険金の非課税枠を計算する前に、正味の遺産額が相続税の基礎控除を超えるか確認しましょう。

基礎控除は次の式で計算します。

相続税の基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人の数

※法定相続人の数に含める養子は、原則として実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までです。養子がいる家庭は、法定相続人の数え方を確認してください。

法定相続人が配偶者と子1人なら、基礎控除は4,200万円です。

正味の遺産額が基礎控除以下で、納税・生活・財産配分に使う現金にも困らない場合は、相続税の軽減だけを目的に保険を増やす必要性は低くなります。

被相続人が保険料を負担し、相続人が死亡保険金を受け取る場合

被相続人が保険料を負担し、相続人が死亡保険金を受け取る場合、非課税限度額は次の式で計算します。

死亡保険金の非課税限度額=500万円×法定相続人の数

※法定相続人の数は、基礎控除と同じ相続税法上の数え方を使います。

非課税枠は保険契約1件ごとに使えるものではありません。

相続人が受け取る対象死亡保険金の合計で判定します。

新たな契約へ使える非課税枠

新たな契約へ使える非課税枠は、次のように整理できます。

非課税枠の未使用額=非課税限度額-相続人が受け取る既契約の対象死亡保険金

計算結果が0円未満になる場合、非課税枠の未使用額は0円です。

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法定相続人が配偶者と子1人の場合金額
死亡保険金の非課税限度額1,000万円
既契約の対象死亡保険金600万円
非課税枠の未使用額400万円
ねくこ

この例では、相続人が受け取る新たな対象死亡保険金が400万円までなら、既契約と合わせて非課税限度額の範囲に収まります。
400万円を超える契約が無意味になるのではなく、超えた部分には非課税枠が残らないという意味です。

不動産が多い家庭では納税資金を残せる

相続税の申告と納税は、原則として被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。

相続税は金銭で一度に納付するのが原則で、延納・物納には要件があります。

正味の遺産額が基礎控除以下なら、原則として相続税の申告は不要です。一方、基礎控除を超え、配偶者の税額軽減などを使って納付税額が0円になる場合は、特例を受けるために申告が必要です。

ねくこ

自宅、賃貸不動産、自社株などが財産の中心で、預貯金が少ない家庭では、税額だけでなく申告期限までに使える現金を確認する必要があります。
死亡保険金を納税用の現金として残す設計には、非課税枠を超えても意味があります。

受取人を指定して現金の配分を調整できる

死亡保険金は、原則として契約上の受取人が取得します。

自宅を承継する子とは別の相続人へ現金を残すなど、財産配分を調整する目的にも使えます。

ただし、受取人が保険金を受け取った後に別の家族へ任意に渡すと、受取人からその家族への贈与として扱われる場合があります。

最初から誰にいくら残すかを決め、保険金とほかの遺産を合わせて考えましょう。

ねくこ

受取人指定をめぐって家族間の対立がある場合や、遺留分への影響が問題になる場合は、受取人変更だけで決めず弁護士へ相談してください。

生命保険を検討しやすい家庭・慎重に考えたい家庭

生命保険の優先度は、相続税の有無、非課税枠、現金不足、保険料支払後の手元資金で分かれます。

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家庭の状況判断次に行うこと
基礎控除を超え、非課税枠が残り、納税に使える現金も不足する生命保険を検討しやすい税額と不足する現金を同じ前提で試算する
非課税枠は使い切っているが、不動産中心で現金が少ない納税資金の確保が目的なら候補節税効果と現金確保の役割を分ける
遺産額が基礎控除以下で、十分な現預金がある相続税対策としての優先度は低い死亡保障や資金配分の必要性で判断する
生活費・医療費・介護費に使う預貯金まで保険料に回す慎重に考える必要な手元資金を先に残す
保険料負担者が途中で変わっている契約変更前に税務確認を優先する払込口座と契約変更履歴を整理する
受取後に家族へ分配する予定がある受取人の指定を見直す渡したい相手を契約上の受取人にできるか確認する

死亡保険金の非課税枠はいくら?現預金と税額を比較

死亡時点の経済価値が同じでも、全額を現預金で残す場合と、一部を相続人が死亡保険金として受け取る場合では、相続税の計算へ入る金額が変わります。

座って話をする三世代親子・ファミリー

現預金7,500万円と、死亡保険金を含む7,500万円を比べる

以下は、生命保険を使わない場合と使う場合を、同じ経済価値総額7,500万円で比べた試算例です。

試算の前提

  • 被相続人:夫
  • 法定相続人:妻と子1人
  • 全額現預金の場合:通常財産7,500万円
  • 生命保険を使う場合:通常財産6,000万円+死亡保険金1,500万円
  • 被保険者・実際の保険料負担者:夫
  • 死亡保険金受取人:相続人
  • 基礎控除:4,200万円
  • 死亡保険金の非課税限度額:1,000万円
  • 債務、葬式費用、生前贈与の加算、小規模宅地等の特例、各種税額控除は考慮しない
  • 金額は1万円単位に丸める
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項目全額を現預金で残す1,500万円を死亡保険金で残す
経済価値総額7,500万円7,500万円
死亡保険金の非課税額0円1,000万円
課税価格の合計7,500万円6,500万円
基礎控除4,200万円4,200万円
課税遺産総額3,300万円2,300万円
相続税の総額(税額控除前)395万円245万円
ねくこ

この前提では、課税遺産総額が1,000万円、配偶者の税額軽減などを反映する前の相続税の総額が150万円変わります。非課税枠1,000万円が、そのまま節税額1,000万円になるわけではありません。相続税の総額は、課税遺産総額を法定相続分で分けて税率を当てはめて計算します。[4][5]

※この表は税務上の違いを示す仮定ケースです。保険料1,500万円を支払えば死亡保険金1,500万円を受け取れるという商品試算ではありません。実際の加入判断では、払込保険料、保障期間、解約返戻金、手数料、資金拘束を別に比べましょう。

配偶者と子のどちらが受け取るかで一次相続の納付額が変わる

上の試算と同じ条件で、妻と子の経済的取得額を各3,750万円にそろえ、死亡保険金の受取人に応じて通常財産の配分を調整します。

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比較項目全額を現預金で残す妻が死亡保険金を受け取る子が死亡保険金を受け取る
妻の経済的取得額3,750万円3,750万円3,750万円
子の経済的取得額3,750万円3,750万円3,750万円
妻の課税価格3,750万円2,750万円3,750万円
子の課税価格3,750万円3,750万円2,750万円
相続税の総額(税額控除前)395万円245万円245万円
妻の納付税額(配偶者の税額軽減適用後)0円0円0円
子の納付税額約198万円約141万円約104万円

※妻の納付税額は、遺産分割が成立し、相続税申告書と必要書類を提出するなど、配偶者の税額軽減の適用要件を満たす前提です。申告期限まで未分割の財産は原則として軽減対象になりませんが、所定の手続きにより期限後の分割でも適用できる場合があります。[6]

配偶者には、実際に取得した正味の遺産額が1億6,000万円または法定相続分相当額までであれば、配偶者の税額軽減があります。[6]この仮定では、子が保険金を受け取ると非課税額が子の課税価格から差し引かれるため、一次相続で子が納める税額は小さくなります。

ねくこ

これは、子を受取人にすべきという一般的な結論ではありません。配偶者の生活費、介護費、ほかの財産、子が取得する不動産、家族間の配分によって適切な受取人は変わります。

配偶者へ財産を集中させると二次相続で負担が増える場合がある

一次相続では配偶者の税額軽減を使えても、配偶者が亡くなる二次相続では同じ軽減を使えません。配偶者自身の財産が多い家庭では、一次・二次相続を通算して比べる必要があります。

二次相続試算の追加前提

  • 配偶者自身の財産:3,000万円
  • 「比較的均等に配分」は子が死亡保険金1,500万円を受け取り、妻・子の経済的取得額を各3,750万円とする
  • 「配偶者へ財産を集中」は妻が死亡保険金1,500万円を受け取り、妻6,000万円・子1,500万円を取得する
  • 二次相続の相続人:子1人
  • 二次相続までに財産の消費・増減はない
  • 二次相続の基礎控除:3,600万円
  • ほかの控除・特例は考慮しない
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項目財産を比較的均等に配分一次相続で配偶者へ財産を集中
一次相続で配偶者が取得3,750万円6,000万円
一次相続で子が取得3,750万円1,500万円
一次相続の子の納付税額約104万円約57万円
二次相続時の配偶者財産6,750万円9,000万円
二次相続の子の納付税額約430万円約920万円
一次・二次相続の合計約534万円約977万円

この仮定では、一次相続で配偶者へ財産を集中させたケースの合計税額が約443万円多くなります。差が生じるのは、受取人名だけではなく、一次相続で配偶者へ渡した財産総額が異なるためです。

※実際には、二次相続までの生活費・医療費・介護費、運用、贈与、財産価格の変動によって結果が変わります。一次相続の税額だけで受取人と遺産配分を決めず、同じ前提で二次相続まで試算してください。

ねくこ

配偶者の税額軽減だけで一次相続を決めると、二次相続で子の負担が増える場合があります。配偶者自身の財産も試算へ入れましょう。

契約形態と受取人で税金が変わる

死亡保険金にかかる税金は、被保険者、実際の保険料負担者、死亡保険金受取人の組み合わせで決まります。契約書の「契約者」欄だけでは判断できません。[2]

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被保険者実際の保険料負担者死亡保険金受取人主な税金
妻・子相続税
所得税
贈与税

※表は、記載した人が保険料を全額負担した基本形です。契約期間中に負担者が変わった場合や、複数人が保険料を負担した場合は、負担割合を含めて課税関係を確認してください。

ねくこ

相続税の死亡保険金非課税枠を使える基本形は、被保険者と保険料負担者が被相続人で、相続人が死亡保険金を受け取る契約です。保険料負担者と受取人が同じ場合は所得税、三者がすべて異なる場合は贈与税になるのが基本です。

契約者名ではなく実際の保険料負担者と変更履歴を見る

契約期間の途中で契約者を変更した場合や、夫婦それぞれが保険料を負担した場合は、現在の契約者名だけで税目を決められません。

ねくこ

保険証券に加えて、契約者変更の履歴、保険料の払込口座、誰の収入から支払ったかが分かる資料を整理しましょう。複数人が負担している契約や、贈与を受けた資金で保険料を払った契約は、変更前に税理士へ確認する必要があります。

複数の相続人が受け取ると非課税枠は受取額で按分する

複数の相続人が死亡保険金を受け取る場合、非課税限度額は各人の受取額に応じて配分します。[1]

死亡保険金1,500万円を、配偶者が900万円、子が600万円受け取り、非課税限度額が1,000万円である場合の配分は次のとおりです。

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受取人受取額配分される非課税額課税価格に含める保険金
配偶者900万円600万円300万円
600万円400万円200万円
合計1,500万円1,000万円500万円
ねくこ

配偶者の非課税額は「1,000万円×900万円÷1,500万円=600万円」、子は「1,000万円×600万円÷1,500万円=400万円」です。相続人以外が受取人となる保険金には、死亡保険金の非課税枠を使えません。

相続対策に必要な死亡保険金はいくら?

必要な死亡保険金は、非課税限度額ではなく、相続直後に不足する現金から考えましょう。

死亡保険金額の目安を考えるための数字プレート

追加で備える死亡保険金の候補額=MAX[0、想定相続税+相続直後の生活資金+相続人間の調整資金-申告期限までに使える現預金-既契約の死亡保険金]

計算結果がマイナスになる場合、追加で備える候補額は0円として扱います。

この式は、納税・生活・財産配分に必要な現金の不足額を整理するためのものです。国税庁が定める公式の必要保障額計算式ではなく、加入額を決める前の資金整理に使います。

「相続直後の生活資金」は、収入や公的給付が整うまでに残す生活費です。「相続人間の調整資金」は、不動産などを取得しない相続人へ残す現金を指します。「申告期限までに使える現預金」には、売却時期が未確定の不動産や、すでに生活資金として計上した金額を重ねて含めません。既契約の死亡保険金も別項目で1回だけ差し引きます。

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仮定する項目金額
想定相続税400万円
相続直後の生活資金300万円
相続人間の調整資金500万円
申告期限までに使える現預金▲600万円
既契約の死亡保険金▲200万円
追加で備える候補額400万円

この例では、不足額は400万円です。追加契約をする前に、既契約の保障額、保険金が支払われる条件、受取人、払込期間を確認しましょう。

ねくこ

追加する死亡保険金によって課税価格と想定相続税が変わる場合があるため、候補額を置いた後に相続税額をもう一度試算しましょう。

非課税枠いっぱいではなく保険料支払後の手元資金で決める

非課税枠が1,000万円残っていても、死亡保障1,000万円を追加すべきとは限りません。高齢での加入、一時払い、外貨建て、変額型などでは、保険料負担や解約時の受取額が大きく変わります。

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確認軸契約前に見る内容止まる条件
保障期間死亡時まで保障が続くか、更新や満了があるか必要な時期に保障が切れる
払込保険料総保険料、払込期間、一時払い後の手元資金生活・医療・介護資金が不足する
解約返戻金年ごとの返戻金、元本割れする期間途中解約する見込みが高い
通貨・運用為替、価格変動、市場価格調整、手数料変動時の受取額を許容できない
受取人・税目保険料負担者、被保険者、受取人、変更履歴課税関係を整理できない
ねくこ

保険商品の内容は複雑な場合があります。契約概要、注意喚起情報、ご契約のしおり・約款を読み、保障、費用、解約条件をそろえて比較しましょう。[12]

既契約の保険料や保障額から見直したい場合は、生命保険料を払い過ぎているときの見直し方と、保険を見直すタイミングと注意点もあわせて確認しましょう。

やってはいけない相続税対策の6つの勘違い

死亡保険金には非課税枠がありますが、受取人や保険料負担者を誤ると、想定した相続税対策になりません。次の6点は、契約変更や新規加入の前に避けたい勘違いです。

相続税対策で避けたい勘違いを確認する
  1. 相続人以外でも非課税枠を使えると思う
  2. 契約者名だけで税金が決まると思う
  3. 受取後に家族へ分けても遺産分割だと思う
  4. 配偶者を受取人にすれば必ず有利だと思う
  5. 死亡保険金が発生していない契約は相続財産にならないと思う
  6. 名義を変えれば相続税対策になると思う

勘違い1|相続人以外でも非課税枠を使える

死亡保険金の受取人が相続人ではない場合、死亡保険金の非課税枠は使えません。相続放棄した人や相続権を失った人が受け取る保険金にも、非課税規定は適用されません。[1]

一方、非課税限度額や基礎控除を計算するときの法定相続人の数は、相続放棄がなかったものとして数えます。人数に含まれることと、その人が受け取った保険金へ非課税枠を使えることは別です。

ねくこ

孫など相続人以外へ保険金を残す場合は、非課税枠に加え、相続税額の2割加算に該当するかも確認しましょう。[8]

勘違い2|契約者名だけで税金が決まる

税目は、被保険者・実際の保険料負担者・受取人の組み合わせで決まります。夫名義でも妻が保険料を負担していれば、所得税または贈与税になる場合があります。保険証券、払込口座、契約者変更履歴をそろえ、名義と実態を照合しましょう[2]

勘違い3|受取後に家族へ分けても遺産分割になる

死亡保険金は契約上の受取人が取得します。受取後に別の家族へ渡すと贈与として扱われる場合があるため、代表者がまとめて受け取る前提にせず、契約時点で受取人と受取割合を決めましょう[3]

勘違い4|配偶者を受取人にすれば必ず有利になる

配偶者の税額軽減で一次相続の納付額が小さくなる場合がありますが、配偶者へ財産を集中させると二次相続の負担が増えることがあります。配偶者自身の財産と生活・介護資金を含め、一次・二次相続を同じ前提で試算しましょう。[6]

勘違い5|死亡保険金が発生していない契約は相続財産にならない

被相続人が保険料を負担し、別の人が被保険者となっている契約で、被相続人が契約上の権利を持つ場合は、死亡保険金がまだ発生していなくても、その生命保険契約に関する権利が相続税の対象になることがあります。

ねくこ

原則として相続開始時の解約返戻金相当額で評価します。解約返戻金のほかに前納保険料や剰余金等がある場合は加算され、掛け捨てで解約返戻金がない契約は評価しません。保険証券、払込履歴、解約返戻金証明書をそろえましょう。[10]

勘違い6|名義を変えれば相続税対策になる

契約者や受取人を変更しても、過去に誰が保険料を負担してきたかは消えません。形式的な名義変更だけで、課税関係を都合よく変えることはできません。

変更前に、現在の契約関係、保険料負担履歴、変更後の受取人を整理しましょう。高額な契約や複数人が保険料を負担した契約は、保険会社と税理士の双方へ確認する必要があります。

ねくこ

名義だけを変えるのではなく、払込履歴と今後の受取人まで整理してから変更しましょう。

【Q&A】生命保険の相続税対策で迷いやすい疑問に答える

よくある疑問と答えは次のとおりです。

死亡保険金の非課税枠はいくらですか?

相続人が受け取る死亡保険金の非課税限度額は、500万円×法定相続人の数です。被相続人が保険料を負担し、相続人が受け取る基本形が対象になります。[1]

保険契約1件ごとではなく、既契約を含む対象死亡保険金の合計で判定するため、新規加入前に既契約の死亡保険金を合計しましょう。

非課税枠が1,000万円なら、相続税も1,000万円減りますか?

いいえ。非課税枠で減るのは死亡保険金の課税価格であり、実際に減る相続税額ではありません。

最終税額は、課税遺産総額、法定相続分、各人の取得額、配偶者の税額軽減などで変わります。[4][5][6]

契約者が夫なら、死亡保険金には相続税がかかりますか?

契約者名だけでは決まりません。被保険者、実際の保険料負担者、死亡保険金受取人の組み合わせで、相続税・所得税・贈与税のいずれになるかが変わります。[2]

契約者変更や複数人による保険料負担がある場合は、保険証券、払込口座、変更履歴を整理し、課税関係を個別に確認しましょう。

死亡保険金の受取人は配偶者と子のどちらがよいですか?

一律には決められません。配偶者の生活資金、子が取得する財産、配偶者自身の財産、二次相続までの合計税額を同じ前提で比べる必要があります。

一次相続だけで有利に見える配分でも、配偶者へ財産を集中させると二次相続の負担が増える場合があります。[6]

相続放棄した人が受け取る死亡保険金に非課税枠は使えますか?

相続放棄した人が受け取る死亡保険金には、死亡保険金の非課税枠を使えません。[1]

一方、非課税限度額を計算する法定相続人の人数は、相続放棄がなかったものとして数えます。人数計算と受取人ごとの適用を分けて考えましょう。

死亡保険金を受け取った後、ほかの家族へ分けてもよいですか?

受取人が死亡保険金を受け取った後、別の家族へ任意に渡すと、受取人からその家族への贈与として扱われる場合があります。[3]

代表者がまとめて受け取る前提にせず、契約時点で受取人と受取割合を決めましょう。

相続税対策なら、非課税枠いっぱいまで生命保険へ入るべきですか?

非課税枠いっぱいまで加入する必要はありません。必要額は、想定相続税・生活資金・相続人間の調整資金から、申告期限までに使える現預金と既契約の死亡保険金を差し引いた不足額を基準にしましょう。

生活・医療・介護資金を先に残し、保険料、保障期間、解約返戻金、為替・価格変動まで確認してから判断しましょう。

加入・見直し前に7ステップで確認する

相続税対策として生命保険を使うかは、非課税枠からではなく、財産・既契約・不足する現金の順に判断しましょう。

チェックリストとペン
STEP
財産と債務を一覧化する

預貯金、不動産、有価証券、保険契約、自社株、借入金、未払金を整理しましょう。

STEP
法定相続人を確認する

配偶者、子、代襲相続、養子、相続放棄の有無を整理し、法定相続人の人数を確認しましょう。

STEP
相続税の基礎控除を計算する

基礎控除「3,000万円+600万円×法定相続人の数」と、正味の遺産額を比べましょう。[9]

STEP
既契約の保険を一覧化する

死亡保険金額、被保険者、実際の保険料負担者、受取人、払込口座、契約変更履歴を契約ごとに整理しましょう。

STEP
非課税枠と不足する現金を計算する

既契約を含めた非課税枠の未使用額と、納税・生活・財産配分に必要な現金の不足額を分けて計算しましょう。

STEP
一次相続と二次相続を試算する

配偶者と子の取得額を変えた複数ケースを作り、各人の納付額と二次相続までの合計を税理士へ試算してもらいましょう。

STEP
不足額が残る場合だけ商品条件を比較する

必要な死亡保障額を基準に、保険料、保障期間、解約返戻金、為替・価格変動、受取人変更の条件を比べましょう。

税理士へ相談するときは、財産・債務一覧、家族関係、保険証券、保険料の払込履歴、受取人一覧、配偶者自身の財産を用意しましょう。保険会社や保険代理店へ相談するときは、税額試算で確認した不足額を基準に商品条件を比べましょう。

青空の下、芝生に座ってくつろぐ家族

生命保険は、相続税がかかる見込みがあり、非課税枠が残り、納税や財産配分に使う現金が必要な家庭には候補になります。

一方、遺産額が基礎控除以下で、十分な現預金があり、生活・介護資金を保険料に回すことになるなら、相続税対策だけを目的とした新規加入を優先する必要はありません。

相続税の申告や手続きを全体から確認したい場合は、相続・相続放棄の期限と手続きを、既契約の見直しから始めたい場合は、保険を見直すタイミングと注意点をあわせて確認しましょう。

保険相談を利用する場合も、税額を販売担当者だけで確定しないことが大切です。相続税額と一次・二次相続は税理士、保険料・保障期間・解約条件は保険会社または保険代理店へ分けて確認しましょう。

ねくこ

非課税枠を使い切ることが目的ではありません。保険料を払った後も家族の生活・医療・介護資金が残るかを最後に確認しましょう。

重要なご注意

税制や相続関係は、契約内容と個別事情で取り扱いが変わります。受取人変更、契約者変更、相続放棄、複数人による保険料負担、相続人以外への指定がある場合は、契約を変更する前に税務署または税理士へ確認してください。

引用・参考出典

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